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子供も頑張っている、いわんや……
プロパガンダ・ポスターにおける、主題としての子供の起用は、第一次世界大戦中のイタリアの戦時債券に遡るといわれている。
子供が戦時債券の購入を呼びかける同国のポスターは、子供に向けて製作されたものではなく、けなげな子供の姿を前面に打ち出すことによって、国債の購入に消極的な大人を揺さぶろうとしたのである。「子供も頑張っている、いわんや大人は何をするべきか。当然、国債を購入するべきである。」という反語的な訴えが含まれた作品は、現地で圧倒的な支持を集め、高い宣伝効果があったらしい。
このため、第一次世界大戦中のアメリカにおいても、すぐさま同様のポスターが製作され、日本においては第一次世界大戦後となるが、やはり債券の購入や貯蓄奨励のポスターに、子供を主題としたものが製作されるようになった。
当時の新聞報道によると、度重なる起債とその購入斡旋に対して、国民の間には「支那事変国債はもう結構」という態度が見られ、売れ行きは徐々に悪化していったようである。
だからこそ、大蔵省も《支那事変国債―ムダヅカヒセズコクサイヲカヒマセウ―》や、《支那事変国債―胸に愛国手に国債―》のような、子供を主題とした、一般受けがよく、大人に対しても効果的なポスターを製作したのである。