私たちはなぜゴキブリを嫌うのか? 新進気鋭のゴキブリ研究者・柳澤静磨さんインタビュー第3弾。
ゴキブリを愛してやまない彼に、「人がゴキブリを怖がる理由」について聞いてみた。必要なのは、殺虫剤ではなく、正しい情報だ。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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ゴキブリが怖いのは「色」のせい?
――これまでのお話で、柳澤さんご自身も大人になるまでゴキブリを怖いと思っていたというエピソードがでてきましたが、そうした実感も含め、ゴキブリを怖いと感じるのはなぜだと思われますか?
柳澤静磨さん(以下、柳澤) 僕自身、ゴキブリが嫌いだったからこそわかるのですが、ゴキブリが嫌われる理由のひとつは、色です。黒くてツヤツヤしている。引き込まれそうなブラックホールのような雰囲気があるし、正体がわからない影みたいな感じがして、怖いという感情を持ちます。
色については、僕のもとにこんな問い合わせが来ることがあります。白いゴキブリを見かけたのですが、幸運の前兆でしょうか。殺さず逃がしました、と。でもそれはほとんどの場合、脱皮後のゴキブリで、白い姿でいる時間は数十分~3時間程度。目撃できたのは、確かにラッキーであるのは間違いないかもしれませんが、ごくごく普通のゴキブリです。
白いゴキブリを新種のゴキブリでしょうか? という問い合わせもあります。白いというだけで、これほどまでにイメージが変わるんだなと驚きますね。
――黒くて家に入ってくることもある虫といえば、アリも黒いですが。
柳澤 確かに家に入ってくる虫はほかにもたくさんいるけれど、その中でもゴキブリは体が大きいのも、飛びぬけて嫌われる理由だと考えています。
家屋に出没するゴキブリの多くはクロゴキブリです。クロゴキブリは体長25~33ミリ。黒いと思われているけど、よく見ると上翅(じょうし)は赤褐色。流線型のフォルムはスポーツカーのようで、屋内だけでなく野外にもたくさん生息しているのですが(北海道~沖縄諸島)、なかなかの存在感を放っています。
小さいものですと、クロゴキブリの半分以下のサイズのチャバネゴキブリも家屋に出るゴキブリですね。最大級のものは、30~40ミリのワモンゴキブリ。チャバネゴキブリもワモンゴキブリも年中温かい環境を好むので、本州ではレストランや地下街などの屋内でよく見られます。