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――大きくて黒いものが家に入ってきたら確かに嫌だ。しかしゴキブリへの恐怖は、それ以上のものがありそうです。

柳澤 黒い、大きい、家屋に入ってくるという性質だけが問題なのではなく、さまざまなイメージが絡み合っているからでしょう。「ゴキブリ汚い! 怖い!」というイメージにつながるCMや、親の影響、近しい人の反応や言葉も、刷り込みみたいな感じで入ってしまう。

 生態を良く知らないと、何をするのかわからないような怖さがある。そうしたイメージが、社会全体にしみついているんじゃないでしょうか。

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ゴキブリの種類はさまざま。中には見た目が美しいものも(写真:柳澤さん提供)

――最近では、沖縄こどもの国で保護者に向けて「虫を気持悪い、こわい、きたないと言わないで」とお願いする張り紙が出たことも話題になりましたね。しかし家屋ですと、不衛生だからいやだ、という感覚を持つ人も多いと思いますが。

柳澤 ゴキブリ(といっても一部です)が害虫であるのも確かです。ゴキブリは雑食で、様々な場所を歩き回ります。すると排水溝やシンクなど、雑菌の多い場所を通ったあとに、食卓や食材の上を歩き、病原体(サルモネラ菌、赤痢菌、チフス菌など)を伝播する可能性があります。これは家屋にいるゴキブリだけでなく、森林で暮らすゴキブリも、どんな場所を歩いてきたかわかりません。

 しかしゴキブリに限った話ではなく、他の生き物にも言えることです。カメでも魚でも、野生の生き物を触ったら、よく手を洗いましょう。

人はゴキブリ嫌いを克服できるのか?

――ゴキブリ嫌いは、柳澤さんのように克服できるものですか?

柳澤 僕はもともと虫が好きであるうえ、たまたま職場で好きになれる機会がありましたが、ゴキブリ嫌いを治すのは、基本的に難しいと思います(笑)。

 そもそも、ゴキブリを嫌うことは悪いことではありません。ただ、興味が出て、知らない間に好きになるということはあると思います。実際、昆虫館にも「ゴキブリがどうしても怖くて、知ることで多少でも怖さが薄らぐかと思って来た」って人は結構聞きますね。ゴキブリを知ろうと一歩踏み込むことで、和らぐ怖さがあるようです。

――この記事も、恐怖を和らげる一歩になるといいのですが。

柳澤 正しく知って正しく怖がることで、そんなむやみやたらに怖がることはなくなるのかなと思います。悪い生き物ではない! とはいっても、家の中で殖えちゃってるって状況であれば単純に不衛生ですから、必要なら防除が必要です。飲食店なら、なおさらですよね。怖がるというか、適切な防除です。