兼業主婦より圧倒的に専業ママの方が大変
水野 「小さい子どもを育てながら仕事なんて大変だね」と言っていただくことがありますが、私の体感としては、圧倒的に専業ママの方が大変だと思いました。
子どもを生んですぐにドラマの現場に入ったんですが、そのとき、仕事のあまりの楽さに驚いて。だって、基本的にみんなと意思疎通できるし、その時間は仕事「だけ」すればいいわけで、「休憩時間」や「トイレ」という誰にも邪魔されない時間・空間まである。それがどれだけ贅沢なことだったのか、子育てをしてはじめて知りました。
――小さい子どもと二人きりだと、常に子どもを見ていなければという緊張感もあるし、トイレ含め、ゆっくり「自分の時間」なんて区切りはつけられないですよね。
水野 だから、それを日々こなしている専業の方が気持ちを病みやすいのは当然だと思いました。しかも、一日ちゃんと命を守り抜いたとしても、誰かから褒めてもらえるわけでもない。
「お母さん」になると「母性」や「本能」で子どものことが手にとるようにわかるから、できて当然——みたいに思われがちですよね。でも、私は赤ちゃんが泣いている理由なんてわからなかったし、母親だって不安で仕方ないんですよ。
――パートナーに「お前のほうが泣き止むから」みたいに言われても困りますよね。それは触れている時間の長さという経験値の問題で、エスパー的な能力ではないというか。
水野 うちは唐橋もめちゃくちゃ育児をやっていますけど、そんな彼ですら、子どもが赤ちゃんのときに丸一日子どもと二人っきりになったときは、本当にげっそりしていました。帰ってくるなり私に子どもを渡してきて、「トイレ行きたい!」。ずっとトイレにすら行けなかったんですね。
ワンオペ育児中のディレクターの奥さんが号泣してたワケ
――体験してはじめて「こんなに大変だと思わなかった」とわかるんですね。
水野 あれだけ一緒にそばで子育てしてきた人ですらわからないなら、本当にちゃんと伝えないと、と思いました。それで、専業ママについてエッセイにも書いたんです。
――ニュースサイト「AERA dot.(アエラドット)」の連載中でもっとも反響があった回が、まさに専業ママのことを書いた回だったそうですね。
水野 そのエッセイをきっかけに「専業主婦の大変さについて語ってほしい」と、テレビ番組からゲスト出演のオファーもありました。聞けば、番組ディレクターが家に帰ったら、ワンオペ育児中の奥さんが号泣してたそうなんです。その涙のきっかけが私のエッセイだったらしく、「そんなに妻が孤独になっていたとは思わなかった」と話をされていました。