9月28日。長い階段を登ってたどり着いた、半月前の札幌ドーム本拠地最終戦。球場に入ると人、人、人。なんだか久しぶりの光景。売店の並びも凄い。試合が始まる頃にはスタンドは埋め尽くされていた。コロナ以降はほとんど見られなかった光景だね。4万分の1になる感覚はいつ以来だろう。とにかく久しぶりだなぁ。

 初回、近藤が2ランを打つ。声援は自重しなきゃいけないので拍手。満員のスタジアムの手拍子応援は迫力あるね。試合展開は途中からダレ気味になるものの(苦笑)最後のセレモニーではまた盛り上がる。2004年、北海道日本ハムの札幌ドーム最初の始球式をつとめた当時7歳だった女の子が、2022年に「終球式」を行ったのも何だかグっと来てしまった。立派な女性になったねえ、などと親戚のおじさん感覚になってしまう。18年経ってるんだもんなぁ。時の流れを感じてしまうよ。

「新庄観に行こうぜ」という誘い文句

 あの頃の、初めての札幌ドーム観戦のことを思い出す。友人に「野球観に行こうぜ」と誘われて行ったんだっけ。「新庄、生で観たいだろ?」。

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 2004年。ロッテ戦だ。なかなかに空いていた外野席の一角だったな。レプユニも持ってなかった。あの頃はスタンドにそういう人も多かったんじゃないかと思う。喋りながらのんびり観戦。初回を終えたあたりで仕事を終えた(当時の)連れ合いからの電話。「ドームおいでよ、新庄観にさ」と誘って途中から合流させたっけ。それほど野球好きではない彼女にも、そう言った方が引きが強いだろうからね。

 少し前に座っていた小笠原道大のレプユニを着たお兄さん。応援歌を歌い、マスコットバットを力強く叩き、プレーごとに大きな声を上げている。おお、これが熱心なファンというやつだな。僕らのような物見遊山ではない熱い野球観戦スタイル。実際に間近で見るのは初めてだよ。

 あ、新庄だ。スタイルだけじゃなくプレーも洗練されていて、立ち振舞も格好いい。やっぱスターは違うね。ついでに相手のロッテのセンターはベニー・アグバヤニ。彼は彼でなんだか立ち振舞いに愛嬌があったね。連れ合いも「ベニーなんか可愛い」「新庄格好いい」と言ってた。スラっとした新庄とムチっとしたベニーの対比。それが私の札ド初観戦の印象。試合はいわゆる馬鹿試合というやつで、連れ合いも飽きてきたようなので途中で帰宅したのだった。

 いま思えばその頃はまだファンと呼べるものではなく、ひとりの野球好きとしてなんとなく観戦してたんだなぁ。

新庄剛志 ©文藝春秋

 2004年パ・リーグプレーオフ第一ステージ。西武対日本ハム。初戦は取って取られての熱戦だったな。小笠原が一発打てばフェルナンデスが打ち返す。セギノールがまた打ち返す。やったらやり返す展開も軍配は西武に。2戦目は最後ハラハラするような展開。最終回に1点差まで攻められるけど守りきって1勝1敗。熱いぜプレーオフ。画面の向こうのプレーに一喜一憂した。第3戦、劣勢のなか土壇場の9回に出た木元邦之の同点2ランには思わず声を上げて喜んだよね。ガックリと頭を垂れる西武守護神豊田。ハム頑張れ、ハム勝ってくれ。試合はその裏、和田にサヨナラホームランを浴び、惜しくも第一ステージで敗退。同じように頭を垂れるハム横山。そんなとこまでやり返さなくていいのに! 悔しい、けどなんとなく嬉しさも少しあったんだよね。おらがまちのプロ野球チームを応援するというのはこういう気持ちなんだなぁと思って。最高に熱い試合してくれたことに誇らしい気持ちだったよ。

 ああ、私は日ハムファンになったんだな。自覚するようになったのはその頃だったかもしれないな。