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「ショート源田の“守備のさばき方”を上手に伝えられたら」80歳で現役、西武の魅力を伝える“名物アナ”の物語

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/09/20
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ショート源田の魅力を伝えたい

 もちろん、陰の努力もある。70歳をすぎて“放送界の怪物”と言われるようになった頃、近所のジムに通うようになった。

「7、8年前くらいからですね。何かやらなきゃいけないかなと思って。最近はプールにはまっています。水中を少し歩いて、クロールで100メートルは絶対泳ぐようにして。あとバタ足をやったり、平泳ぎをやったりして、150~200メートルでおしまい。昔はクロールをできなかったけど、練習して泳げるようになりました。周りに教えてくれる人がいるんですよね」

 長く現場に立ち続けるには、最後は体力勝負になる。特に、狭山丘陵を切り拓いて建てられたベルーナドームは放送席まで傾斜のある道が続き、宮田アナは“職場”に通うために週に2、3回、ジムで運動している。そうして新たな友人ができ、クロールも泳げるようになった。ちなみに実況を担当する前日は、「何かあってはいけないから」と泳ぐのは控えて筋トレだけにとどめているそうだ。

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 長く野球を喋ってきながら、最近、改めて気づいた魅力もある。近年のライオンズを見ながら、宮田アナは特に守備に引き込まれるようになった。

「ショート源田の守備のさばき方を上手に伝えられたらなと思っています。三遊間深いところからノーステップスローで投げたのか、セカンドベース寄りを追いかけて走りながら一塁へ投げたのか。中継プレーも含めてね。相手から見ると、本当に嫌な選手じゃないのかなと思います。ダブルプレーや外野を含め、守備が楽しくなりましたね」

今季最後の担当は「大一番」に!?

 ライオンズとラジオと言えば文化放送、NACK5がよく知られるが、宮田アナも“顔”の一人だ。1969年に金田正一が400勝を飾った瞬間を伝え、2022年の今季は村上宗隆が5打席連続本塁打の日本記録を達成したシーンを中継した。ライオンズで特に記憶に刻まれているのは、1983年の巨人との日本シリーズ第6戦で延長10回、代打・金森栄治がレフトにサヨナラヒットを放って歓喜した場面だ。

「アナウンサーはみんな、記録とか区切りをチャンスがあれば喋りたい。村上の5打席連続ホームランも、神宮球場のヤクルト対中日を東海ラジオに向けて喋ったらたまたま回ってきました。若いアナウンサーでもいいのにと思いながら、みんなに『持ってますね』って冷やかされますね」

 80歳となり、ラジオで喋ることが「生きがい」と言う宮田アナ。夕刊フジのインタビューでは「今年が区切り」とも語っていたが、「去年もそんなことを言っていて、今年もやったわけだから」と笑った。喋ること自体はまだまだ大丈夫で、気になるのはそれ以外の体力の衰えだと言う。

 80歳で迎えた現役58年目の今季、最後に担当するのが9月27日の西武対ソフトバンク戦だ。KBC九州朝日放送に向けて実況する。

「大一番ですね。持ってる宮田アナウンサーとしては、村上の4、5打席を喋ったアナウンサーとしては、優勝が決まるのかなとふとこないだ思ったりして。そんなことがあったら本当に大変」

 そう話した9月7日時点ではどちらが優勝してもおかしくないような状況だったが、その後、ライオンズはつまずいた。今季のパ・リーグでは熾烈な戦いが続いており、果たして27日を迎える時点でどうなっているだろうか。いずれにしても、重要な一戦になることは間違いない。

 縁あって地元球団の西武を担当するようになり、80歳の今も現場に足を運んで好きな仕事を続ける宮田アナ。同じく好きなことを仕事としている者の一人として、その姿を見ながら感じることがたくさんある。いつまでも、にこやかな笑顔を球場で見せてほしい。

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