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先輩に起こされ「変な音が聞こえないか?」

 その神社では2人1組で宿直する。その日は山口さんと、1年上にあたるB先輩と当番が一緒であった。

 B先輩と交代で2時間おきに、境内の見回りをしなければいけない。

 昼と夜、神社は様相を変える。灯篭の灯りがあるといっても、かえって不気味さを増すこともある。

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 そんな中、1人で広大な境内を回らなくてはいけないのだ。山口さんでなくとも怯える人は少なくないだろう。

 1回目の見回りは、震えながらも何事もなく無事に終わった。

 社務所内にある宿直室へと戻ると、全身汗だくになっているのに気がついた。夜といえども夏の暑い盛り、いわんや今日は長丁場である。

 B先輩と交代した彼は少しでも体を休めようと横になったが、暑さのためなかなか眠りにつくことができなかったという。

「おい、山口起きろ!」

 うとうとし始めた頃、B先輩に叩き起こされた。2時間はあっという間に過ぎ、もう交代の時間であった。

 だが、B先輩の様子が少しおかしい。

「何か変な音が聞こえないか?」

 先輩に言われ寝ぼけまなこで耳を澄ますと、「コーン、コーン」と何かを叩いている音がする。

 社務所は本殿の中にある。ここまで音が響くということは、何者かが本殿を取り囲む木塀、いわゆる「玉垣」を叩いているか、何らかの手段をもちいて本殿に入り込み、いたずらをしているに違いないと先輩は言う。

 山口さんは嫌であったが、もう交代の時間であった。B先輩からも「見てこい」と言われ、しぶしぶライトを持ち表に出た。

 ちょうど夏休みの時期でもあった。

 先輩は学生たちか酔っ払いの悪ふざけだと考えていたが、人ではない得体の知れない物の仕業かもしれない……。

 そんなことを考えながらも恐々と耳をそばだて歩いていくと、どうやら玉垣ではなく拝殿横の鎮守の森の方から音がする。

 足を忍ばせそっと近づいてみる。拝殿横に並んだ灯篭の仄暗い灯りの向こうに、白く細長いシルエットが浮かび上がっていた。