「うれしい」「悔しい」がリアルの醍醐味
鈴井 何かを始めるのって、面倒なことは面倒なんです。誰かが重い腰を上げないことには始まらない。われわれオフィスキューは30年前、「北海道に芸能プロダクションをつくったところで何ができるんだ」といろいろな人から言われました。
でもそこから応援してくれる仲間を1人、2人と増やしていって、30年経ったのが今日の姿。これは実際やったらそれだけ成果が出てくることだと思います。今はSNSとかで手軽に情報発信ができますし、仲間を増やすためには必要だと思いますが、それだけではないですよね。
赤平コンサドーレ会なら「次の試合はこないの?」ってメンバーに対面で言えるわけです。すると「しょうがないな、じゃあ行くよ」と腰を上げる。そういうところから絆が太く強くなっていく。弱い線をたくさんつくるより、太い絆をいっぱいつくっていく。これが将来も生き残っていく道だと思っています。
野々村 試合もそうで、実際に来てくれたお客さんとともに、どんなものがつくれるかというのがたぶん一番大事。スタジアムに来てくれればある意味顔が見えるから、そういう仲間をどれだけつくれるか。スポーツはリアルですから、時々嫌なことや悔しいことがあるけど、うれしいこともある。でもそれが一番いいところのはず。リアルからは離れ過ぎてはいけないんだと思っていて。
鈴井 映画とか芝居とか、われわれが普段やっていることは「つくりもの」なんです。楽しいとか悲しいという表現をしても、それは演技であって本当に悲しいわけではない。
野々村 (笑)。
鈴井 でもスポーツはリアルだから、リアルに一喜一憂する。その時のもの、そこのリアルさをひとりでも多くの方に感じてもらえるか。それが次につながっていくのかなと思います。
野々村 あまり悲しい展開ばかりだと付き合うのも大変になりますけどね。
鈴井 (笑)。
野々村 でも何年かに一度はあるはずです。そこはクラブが目標を設定して、到達するために責任を持って取り組むことが必要。目標にたどり着いた時、クラブだけでなく周囲の人、地域の人、仲間になった人たちみんなが達成感を得られるはずですから。
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月刊「財界さっぽろ」2022年10月号の「30周年特集・その先の、オフィスキュー」では、鈴井氏がコンサドーレ社外取締役として取り組む「スター選手」育成、野々村氏がサッカーの試合を「作品」と語る意味などについて大いに語っている。
全国の書店で取り寄せ可能なほか、「財界さっぽろ」オンラインショップからもデジタル版が購入できる。