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《九州3児遺体・初公判》「ふざけんな! 身勝手だ」“子殺し”加害父の「死刑」発言に“ヤクザ牧師”が怒った本当の理由【拘置所インタビュー】

九州3児遺体#14

genre : ニュース, 社会

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元ヤクザ牧師と再会「キリスト教に興味がある」

 かつて田中被告は、福岡県内に本部を置く指定暴力団のヤクザだったが、約9年前に抗争などに嫌気が差して逃げ出している。その際に頼ったのが、自らも元ヤクザの進藤牧師だった。田中被告はクリスチャンにはならなかったものの、教会に通いながら最初の3カ月ほどはまじめに仕事をしていたという。しかし、交際相手へのDVや、金の無心を繰り返してきたことなどがきっかけで次第に足が遠のき、そのまま音信不通となっていた。

約9年前の田中被告(上)と進藤牧師

 長い年月が経ち、田中被告が子殺しという重罪を犯したことを知った進藤牧師は、自ら福岡拘置所へ赴き田中被告と約9年ぶりに再会した。以降、何度も面会を重ねてきた。

「文通を経て、昨年の10月に本人と面会してからは、定期的に会って話をしています。当初は『死にたい』とよく口にしていて、まるで“生きる屍”でした。生きていても、『どうせ一生刑務所だ』とふてくされている印象でした。自分の都合で子供の命を奪っておきながら、自分のことばかり考えているように見えましたね。

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 一方で、涼二は私と妻が来ることを喜んでいました。ほかに面会に来て差し入れとかをしてくれる人はいなかったようですしね。9年前には見向きもしなかったのに 『キリスト教に興味がある』と言って2回目の面会では信仰を告白しました。どこまでキリストを信じていたかはわかりませんが、変わろうとしている涼二をもう一度信じてみようと、私たちも応援することにしたのです」

進藤牧師の著作「極道牧師の辻説法」(学研プラス)

「天国で死んだ子供に会ったときに『お父さん良い人間になったね』って言われるようになれよ」

 ところが9年前のある出来事が発覚する。

「今年に入ってくらいのことです。当時、私の母から借りたお金を踏み倒していたことが分かりました。涼二を問い詰めると、私との関係が壊れるのが怖くて言い出せなかったと。本当にどうしようもないやつだなと思いながらも赦すことにしました。それから、どんなことを過去にしていても赦されると、安心したんでしょうか。本当の意味で信頼されるようになったのかなと思います。

 当初は『子供と一緒に死んでこの世の中を終わらせたい。怖いけど死刑でもいい』くらいのことを言っていました。だから『ふざけんな、自分勝手だ』と怒ったんです。子供の人生を親であるお前が一方的に奪いながら、いつまで自分勝手なんだ、と。『天国で死んだ子供に会ったときに〈お父さん良い人間になったね〉って言われるようになれよ。おまえの人格が変わることが人生の成功だ』と何度も話しました」

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