「自分さえしっかりしていれば子供たちが死ぬことはなかった。毎日、申し訳なかったという思いで過ごしています」
今年8月のある日、福岡拘置所の面会でのことだ。1年前と同じように足を引きずり記者の前に現れた男は、痩せこけていた当時と比べると少しふくよかになっていた。ただ、睡眠薬を服用している影響からなのだろうか顔は少しはれぼったく、目力は弱まっているように見える。元ヤクザとは思えない弱々しい風貌だった。
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時間とともに深まる後悔「なんでこんなことをしてしまったのか」
「(逃亡時にホテルのベランダから飛び降りて骨折したため)両足のかかとと腰がいきましたからね。今も長い距離は歩けません。これも罪滅ぼしというか…」(#1参照)
こう語るのは2021年2月に、養子で長男の大翔(ひろと)くん(当時9)を暴行の末に死亡させた傷害致死罪と、心中するために実子である蓮翔(れんと)くん(当時3)と姫奈(ひな)ちゃん(当時2)を絞殺した殺人罪で起訴された父親の田中涼二被告(42)である。
長期間にわたった裁判の準備が終わり、事件発生から1年半以上を経た今年9月20日、福岡地裁で田中被告の初公判が開かれる予定だ。文春オンラインではこれまで田中被告に拘置所で複数回インタビューしてきたが、初公判を前に再び面会に訪れ、現在の心境を聞いた(インタビュー記事 #7、#8、#9、#10、#11、#12を読む)。
昨夏のインタビュー取材で田中被告は、「離婚後の育児のストレスで大翔を日常的に殴ってしまった。大翔が死んで自分も死ぬしかないと思ったら、蓮翔と姫奈が『離れたくない』と泣くから心中することに決めました」「そして自分は死に損ねた。子供の笑顔は何にもかえられない。なんでこんなことをしてしまったのか」などと自身の行為を深く後悔していた。1年が経過してもその思いは変わらず、むしろ強まっているようにも感じられた。
そんな悔恨の日々を送る田中被告の本心を知る上でキーマンとなるのが、埼玉県川口市でキリスト教の教会を営む進藤龍也牧師である(#13を読む)。