「カジノIRの波は日本に押し寄せて来ます。間違いなくバクダイな金が流れてきて、長者番付にのる大富豪が、日本から複数人誕生することは間違いありません。今サラリーマンだろうが、主婦だろうが、老後の生活を楽しんでいる状態であったとしても、大富豪になれる可能性を秘めています。どうか、この事実を理解してください。あなたもこの波に乗り、バクダイな資産を築くことは、本当にできるのです!」(倒産した日本カジノ学院のオーディションより贄田崇矢社長の発言)
経験不問、カジノIRの波に乗って人生の一発逆転を目指す――。
そんな参加者たちの淡い夢が崩れ去ったのは、景気のいい発言が飛び交うオーディションからわずか5カ月後のことだった。
カジノディーラーを目指す学校として国内最大手だった「日本カジノ学院」が、8月17日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。学校は2014年に設立後、20~30代の若者を中心にカジノディーラー志望者を集めて北海道から九州まで全国で事業を展開。数々の新聞やテレビ番組で紹介され、業界屈指の生徒数を誇っていた。
「巨額の富を築く方法があるとしたら、それって興味ありますか?」
こうしたカジノディーラーを目指す学校事業に加えて2021年頃からは、「数千万以上の収入を得る」未来が手に入ると銘打った幹部候補生オーディションを「10人限定」などとしながら複数回にわたって開催。ディーラー技術やビジネススキルをオンライン講義で学ぶ半年間の“修業期間”を経て、幹部候補生として迎えられる、という触れ込みだった。Facebookやインスタグラムの広告で大々的に宣伝し、かなりの人数を集めたという。
取材班が入手したオーディションの動画では、幹部候補生になれば「メディアでは報道できない業界の内部情報を教える」「海外のカジノでの研修の権利を与える」「英語力はいらず職務経験も不問」(いずれも贄田氏)と“バラ色の未来”が喧伝されている。他にも贄田氏が業界の経営者を紹介し、経済的自由を約束する「圧倒的な環境」を用意し、「生涯付き合う仲間」になると続けた。
「私はいま、日本のIR市場というとてつもないチャンスのど真ん中で活動しているんです」とも発言しており、それらに惹かれて仕事を辞めてオーディションに参加した人もいたという。しかしこのセミナー動画の配信から数カ月後、「日本カジノ学院」はまさかの倒産。オーディション参加者たちは路頭に迷うことになった。
オーディションに参加していたという男性が、その実態を明かす。