「卒業しても、雇ってもらえるのはせいぜい国内のアミューズメントカジノ」
それでも学費は高額だった。スタンダードな「トータル本科コース」で約60万円。さらにオプションを追加すれば年間で100万円以上を支払った人も多くいた。「海外カジノで働ける」という宣伝を受講者は信じたが、卒業後の進路の実態は過酷なものだったという。
「『日本カジノ学院』を卒業しても、雇ってもらえるのはせいぜい国内のアミューズメントカジノくらい。アミューズメントカジノが悪いわけではありませんが、宣伝文句とはずいぶん違います。講師の中に海外の本格カジノ出身者もほとんどおらず、『学院』を卒業してすぐ講師になったような人ばかり。一度もカジノに行ったことがないと公言している講師もいました。そんな授業では技術も知識も得られません。机も実際のカジノとは仕様が違い、ほとんど役に立たなかったでしょう」(別のカジノ業界関係者)
さらに海外での就職を希望する生徒はエージェント会社の仲介を受けることもできたが、面接用の英語講習に約10万円、就職が決まればエージェント会社にも紹介料を支払う必要があった。
「学校側は『エージェントと繋がっているんで確実に働けます』と説明していました。どうしても海外に行きたいと言ってお金を払った生徒もいましたが、必ず受かるわけではない。誰が紹介したところで、本場のカジノが技術が足りないディーラーを雇うわけはないですからね。そもそもワーホリを手続きすれば採用試験くらいは1人でも受けられますし……。『学院』卒業後に別の学校で勉強しなおしてラスベガスのカジノに就職した人がいたのですが、その人のことを学院が『ラスベガスで卒業生が活躍しています!』と勝手に宣伝に使っていたこともあります」(同前)
日本でカジノが正式に開かれる日のメドはついていないが、実現すれば経済効果は“数兆円”とも言われ、業界の期待は過熱の一途をたどっている。
「ほとんどの学校は違いますが、なかには『看板に偽りあり』という状態の学校業者もあります。甘い話に騙されず、自分のお金を使う方法は堅実に見極めてほしいものです」(前出の業界関係者)
そして驚くべきことに「日本カジノ学院」倒産後も、「日本カジノ協会」という団体が「日本IR幹部候補生オーディション」を実施しており、「創設者」として贄田氏の写真が大きく使われている。
取材班は日本カジノ学院の倒産にいたる経緯やオーディションの実態などについて破産管理人を通じて贄田氏に事実確認を行った。
「幹部候補生オーディション」の候補生に退職を促したり、東京への引っ越しを推奨していた件については「かような事実は認識しておりません」と認識を否定した。マーケティングを依頼した会社が同様のことをしたとも聞いていない、と回答した。
「日本カジノ協会」が実施している新たな「日本IR幹部候補生オーディション」については、「本年1月終わり頃、同社にその旨と使用停止の連絡をし、日本カジノ協会で引き取ってもらうのがよいのではないかと話をしたことがあります。しかし、全面バックアップは当然のことながら、日本カジノ学院ではできず、その後も全面バックアップなどの宣伝が使われていることは認識していませんでした。また、日本カジノ協会でも実際には引取はしていないと思います。その意味では、日本カジノ学院倒産後にこのサイトをこのまま運営していることは、虚偽広告であり、停止いただきたいと存じます」と回答した。
カジノは客にとっては遊びでも、ディーラーにとっては仕事である。人生の貴重な時間やお金をベットする先は、慎重に見極める必要がありそうだ。