相手は日本屈指のプロ総合格闘家。元EE JUMPの後藤祐樹はなぜ“朝倉未来”との対戦という「無謀」に挑戦したのか?

 今年1月にタレント復帰した後藤さんの新刊『アウトローの哲学』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

朝倉未来と戦った直後の後藤祐樹さん(写真提供:講談社ビーシー)

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運命を変えたメール

「このような企画があるのですが、参加しませんか」

 去年(2021年)6月の上旬だったと思う。ABEMAから誘いのメールが届いた。僕の仕事用のメアドだった。「朝倉未来と闘う相手役に応募してみないか」という。

 なぜ、僕のところにこのような誘いがきたのかはわからない。ゴマキの弟で元芸能人。なのに刑務所にも入っていたワルなので、企画に合うのでは、と目をつけられたのかも知れない。

 はっきり言って、迷った。悩んだ。

 相手はあの朝倉未来さんだ。「勝ったら1000万円」とはいうが、まあ勝ち目なんてない。

(画像:ABEMA公式サイトより)

 ただ、最初からそんな気持ちで行っては意味がないだろう。「俺は勝つ」、と思っていなければ最初から負けている。

 実はお金が欲しい事情もあった。10代の頃、刺青にハマった。首にも鯉の刺青を彫ってもらった。

 亡くなった母は、刺青自体は否定しなかったが、首の刺青だけは嫌がっていた。腕とかであれば長袖を着れば隠せるけど、首だとどうしても見えてしまう。目立ってしかたがない。

「それだけは消して欲しい」と何度も言っていた。

 結局、その姿を見せる前に母は逝ってしまった。ずっと心残りになっていた。

 だから、生前の約束を果たす。朝倉未来さんに勝って1000万円がもらえたら、首の鯉の刺青を消すいいきっかけになるんじゃないか、と思ったのだ。

 それともう一つ、何か新しいことにチャレンジしたかった。おかげさまで二度目の結婚をし、普通の生活を送ってはいたけれど、そろそろ何か大きなことに挑戦してやってみたいな、という思いがつのっていた。そこに、飛び込んできたお誘いだったわけだ。

 その時、僕は35歳。格闘技のような、体を張った荒々しいことにチャレンジするには、そろそろこれが限界だろう。やるなら今しかない。逃したら、後がない。

 ただ、普段の仕事だってある。出場するならそれに合わせて、体を鍛えておかなきゃならない。

 妻の実家、義父の経営するダクトの会社で働かせてもらっていて、仕事はハードそのものだ。休みは日曜祝日だけ。生活のリズムも定着してきたところだった。なのに、それも崩さなければならない。

 試合に出てボコボコにされ、しばらく寝込まなきゃならなくなることだって、考えられる。そうなったらなったで、会社に迷惑をかける。

 だから、あちこちに相談した。妻や会社はもちろん、姉の後藤真希にも。僕がヘタなことをして、彼女の芸能生活に影響が出ることにならないとも限らないからだ。