「子供たちはお母さんよりお父さんを信頼しているようにみえました」
田中被告が逮捕されて間もない5月、「文春オンライン」取材班は現地入りして取材を進めた。田中被告が住んでいた飯塚市の県営住宅の近隣住民によると、田中被告は数カ月前まで子供の母親でもあるA子さんと結婚しており、5人で暮らしていたという。
ある高齢男性は田中被告と3人の子供についてこう述懐している。
「子供たちはみんな田中さんに懐いていました。2020年12月に元奥さんが包丁を持ち出して、部屋に血の海ができるような壮絶な夫婦喧嘩をしたことがあったのですが、そのときも子供たちはお母さんよりお父さんを信頼しているようにみえました」
当時、喧嘩を仲裁するために駆け付けた警察官が、その場にいた大翔くんと蓮翔ちゃんに「お父さんとお母さんが別れたらどっちについていきたい?」と聞いた。すると2人は声を揃えて「お父さん」とはっきり答えていたという。
「私には子供たちはお父さんに懐いているようにみえましたけどねぇ。現に、夫婦喧嘩の騒動の後、12月末に田中さんは奥さんと離婚しましたが、大翔くんは血のつながっていない田中さんを選んだんですよ」(同男性)
「子育てのストレスがありました」
そこから田中被告と子供たち、4人での生活が始まった。離婚後、田中被告は仕事へは行かず、子育てと家事に追われる日々だったようだ。田中被告は、当時をこう振り返った。
「昨年末の離婚後、すべての家事を一人でやることになり、報道されているように子育てのストレスがありました。働けと言われるかもしれませんが、3人の子供の面倒を見ていると仕事になんか行く時間はないんです。
育児自体は結婚していたときからかなりやっていたので、嫌いではないのですが、大翔は少し難しい子でした。発達障害があって、一度注意してもなかなか直らない子だったんです。そういう性質もあって、大翔は出会った頃、学校でいじめられていたんです。だから、学校に文句を言ったこともある」
田中被告は大翔くんを「難しい子」と言いながらも、元妻と生活している間は彼に向き合って育児をしていた。以前に取材班が大翔くんの通っていた小学校の周辺で取材をしたところ、田中被告が送り迎えをしたり、学習発表会に参加したりする様子が目撃されていた。
「大翔はいじめられやすいというか……。蓮翔と姫奈も、もちろん遊び半分ですが、ものを投げたりカラーバットで叩いたりしていました。それでも大翔は『お兄ちゃんだから』と笑っていた。自分が子供たちに対して『お前、たいがいにせえよ』と言ってしまうことがあったのですが、蓮翔はそれを真似して大翔に怒鳴ることもありました。
自分が自制して、蓮翔たちを怒らなければいけない立場だったのに、それができなかった。大翔は『電気をつけたら消す』と言っても、次につけたら消し忘れてしまう。そんな小さなことでも、離婚後には自分の余裕がなくなり、それまでは許せていたことが許せなくなっていってしまいました」