2007年に起こした「銅線窃盗事件」が原因で、川越少年刑務所に送られた元EE JUMP・後藤祐樹さん。1500人もいる受刑者との共同生活で彼が味わった「不自由」とは?

 新刊『アウトローの哲学』より一部抜粋してお届けする。(全4回の3回目/#1#2#4を読む)

後藤祐樹さん ©文藝春秋

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プリズンライフ

 刑務所は一日の流れがきっちりと決まっている。

 起床は6時40分。チャイムが鳴って、起こされる。

 それから布団を畳んだり、顔を洗ったりに、10分。この、布団の畳み方がちょっとズレていたり、というだけで雷を落とされる。これくらい別に何も変わらないじゃないかと思ったって、しかたがない。ここではそうすることになっているのであり、ちょっとでも違えば怒られる。そういう世界なのだ。

 7時くらいから朝食が配られる。

 川越少刑は受刑者が1500人もいるので、配り終わるだけでそれなりの時間がかかる。最後の方の部屋の者は急いでかっこまなければならないが、配る順番はちゃんとローテーションが組まれている。平等になるようにそれなりの配慮はされているのだ。

 7時50分くらいに房を出て、廊下に並ばされる。点呼があってそれぞれの工場に移動し、作業開始だ。

 僕達は懲役囚なので、どれかの工場で作業することが義務づけられる。働くことが刑罰の中に含まれているので、作業義務のない「禁錮」や「拘留」とはまた別なのだ。だから「働きたくない」などと言えば「就業拒否」と見なされ、「懲罰」の対象とされる。「懲罰」となれば「仮釈放」の考査にも響くので、できる限り避けたいものだ。

「工場」には「生産工場」と「経理工場」とに分かれている。「生産」は文字どおり何かを作る作業。タンスや、ベッドの枠などを作る「木工工場」は、刑務所の作業としてドラマなんかでもよく描かれ、お馴染みだろう。ボールペンや、イヤホンを作ったりする工場もある。

工場外観(写真:法務省サイトより)

「経理工場」は「炊飯」や「洗濯」、「掃除」などで、受刑者の大量の食事を作る「炊場(炊飯工場)」はともかく、掃除などは「工場」という言葉のイメージには合わないだろう。でも刑務所ではなぜかそうした作業もひっくるめて、すべて「工場」と呼ぶ。また、各工場の担当の刑務官は「先生」と呼ばれる。

 ちなみに一番人気は「炊場」で、これは他よりも量が食べられるからだ。「副菜」といって、みんながご飯を食べた後、自分達だけでもう少し料理を作って食べていいということになっている。

 僕が最初に配属されたのは「経理工場」の「舎内掃」だった。刑務所の建物内の掃除をするところで、布団や枕を作ったりもする。僕はここに10か月いた。