文春オンライン

毎朝6時40分起床、先輩の言うことは絶対…「懲役囚・後藤祐樹」のあまりに窮屈なプリズンライフ

『アウトローの哲学』 #3

2022/10/02
note

 午前中の作業は途中、10分間の休憩を挟んで、12時まで。そこから昼休み。昼食をとって、12時50分までのんびり休める。

 運動の時間も毎日あるのだが、これはどの時間帯にやるかは工場によってまちまちだ。運動場は広さが限られている。そこに1500人が一度に出て来ることはできないので、何時から何時まで何工場、というふうに割り振られているのだ。作業の中身によっては、あまり中断しない方がいいものもあるので、そういう工場だと出役後すぐ運動の時間になったりする。

 僕のところは昼休みの後すぐが運動だったので、けっこうキツかった。運動の時間はひたすら走らされるので、食べてすぐ後はやはりツラいのだ。

ADVERTISEMENT

 ©文藝春秋

 運動場に出れない雨の日は、運動の時間は「講堂」での筋トレになる。体育館のような建物で、他にもイベントの時の映画の上映や、講師が来ての「講話」なんかにも使われる。「筋トレ」といってもダンベルなんかは当然なく、腕立て伏せやスクワットなど、体一つでできるトレーニングになる。

 後で詳しく述べるが、少刑では「運動」にとても力を入れているので、講堂での筋トレだってみっちりやらされた。最初の頃は筋肉痛にもかなり悩まされた。

 13時50分から午後の作業開始。16時30分に作業終了で、それぞれの部屋に戻る。17時から夕食で、それが終わると自由時間。18時から20時55分までは、テレビを見ることもできる。21時で就寝時間となる。

 これが毎日、繰り返される。土日は作業はないので一日中、部屋から出ることはない。

何より重要なルールは「番手の序列」

「失礼します。テレビ視聴中ですが、よろしいでしょうか」

 室内で、同房者に話しかけること一つにもルールがある。まずいちいち、断りを入れなければならないのだ。相手が「いいよ」と言ってくれて初めて、本題に入ることができる。「あの~、この件なんですけどね」なんて、いきなり用件を切り出すことは許されない。

 各房は工場ごとに分けられている。

 僕が最初に入った舎内掃工場は、15人くらいと比較的小さな所帯で、途中で少し入れ替わりはあったが基本的に、8人部屋と5人部屋、そして独房が一人ずつという割り振りだった。

 ここで何より重要なルールは、工場に入った順番、「番手」が序列のすべてということだ。年齢に関係なく、先に入った方が偉い。僕の例で言えば、舎内掃工場に最初に行った段階では最下層の「15番手」ということになる。

 その部屋で一番上の番手の者が、「部屋長」。彼の言うことは絶対だ。逆らうことなどあり得ない。