そんな『ウ・ヨンウ』終映後、制作会社「エイストーリー」のイ・サンベク代表がNetflixには放映権のみ売却し、投資を断っていたことを明らかにした。イ代表は、「『キングダム』(Netflixオリジナルの韓国ドラマ)を制作したとき、IPがなかったため残念な思いをした」と言い、こう話している。
「IPはキャッシュカウ(cash cow、ドル箱)となり、制作会社が成長できる基盤を整えてくれますが、これがなければ制作会社は外注のみの下請けとなり収益はほんの少し。永遠に下請けという悪循環に陥ります。けれど、(『ウ・ヨンウ』で)ここから抜け出せました」(韓国日報、8月31日)
同社は、『ウ・ヨンウ』のIPを守ったことで、ウェブトゥーンを5カ国に輸出し、また、ミュージカル制作も計画中。さらにはリメイクのオファーを米国や日本、ドイツなどの数カ国から受けている状態で、そのすべてで収益が見込めるが、それはひとえにIPがあるからこそだ。
同社が放映権のみを購入してくれる媒体を探した結果が無名のケーブルテレビだったという。ただし、この「ENA」は大手通信企業「KT」系列のケーブルテレビ「SKYTV」が運営している。『ウ・ヨンウ』の制作費はKT系列会社が投資したといわれ、総制作費は約200億ウォン(約20億円)といわれている。ウ・ヨンウ弁護士が好きな鯨のCGや弁護士事務所などのセットに経費がかかったといわれるが、その制作費は『イカゲーム』にも匹敵する。
「著作権法改正を」クリエイターの訴え
9月初めには、映画監督組合とシナリオ作家組合所属の200人あまりが「著作権法を改正し、クリエーターにもきちんと報酬が与えられる」ことを求めるため国会議員会館で討論会を開いている。1000万人以上の観客を動員した映画『TSUNAMIーツナミー』のユン・ジェギュン監督や『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ監督、『イカゲーム』のファン監督も参加した。
韓国では流通を円滑にする目的で、特別な契約がない限り、映像制作に関わるクリエーターの著作権は制作会社に譲渡すると著作権法で定められているが、これを改正すべきと訴えている。