「I’ll be back」

 シーズン2への自信ものぞかせたこんな決め台詞で会場を沸かせたドラマ『イカゲーム』のファン・ドンヒョク監督。

 1949年から続く“ドラマ界のアカデミー”米エミー賞で非英語圏作品での初ノミネートとなった『イカゲーム』でファン監督は監督賞を受賞。主演のイ・ジョンジェはアジアの役者として初めて主演男優賞を受賞し、視覚効果賞なども合わせて6冠となる快挙を成し遂げた。

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 韓国ではアカデミー賞4冠の映画『パラサイト 半地下の家族』、米ビルボード1位となったBTSに続く世界での活躍だとメディアはいずれもトップで報じ沸きに沸いたが、一方で「イカゲームエミー賞6冠王にも笑えないクリエーターたち」(メディアトゥディ、9月14日)とも報じられ、業界からは「韓国はまったく儲からない」というぼやき声が。『イカゲーム』の世界的なヒット以降、浮上していたIP(知的財産権)問題が再び俎上に載せられている。

米エミー賞で主演男優賞をアジア男優として初めて受賞したイ・ジョンジェ。『イカゲーム』での演技により、米『スター・ウォーズ』ドラマシリーズの新作『ザ・アコライト』の主役にキャスティングされている ©AFLO

「Netflixの独り勝ち」という声も

『イカゲーム』はNetflixが制作費を全額投資したNetflixオリジナルの韓国ドラマだ。金銭的に崖っぷちまで追い詰められた456人が賞金456億ウォン(約45億円)を懸けて“デスゲーム”を繰り広げる。日本では『神様の言うとおり』、『賭博黙示録カイジ』に似ている、パクリだという批判もずいぶん出た。

 ファン監督も日本の作品にインスピレーションを得たと認めていたが、同作が異なるのは、「人間が見える、ヒューマンドラマになっているところが単なるデスゲームと一線を画している」と語っていた(ソウル新聞、2021年9月29日)。昨年9月にNetflix で公開されるや瞬く間に世界中でメガヒット。米CNNは「実に最高だ」とべた褒めし、劇中課せられたデスゲームのモチーフとされた韓国の子どもの遊びや白いラインが入ったスポーツウェアが各国で流行するなど社会現象も巻き起こした。

 この人気ぶりに、韓国では当初こそ高揚した雰囲気だったが、次第に聞かれるようになったのは、「Netflixの独り勝ち」という声だった。Netflixオリジナル作品は、国にもよるが、同社が制作費を全面的に投資する代わりに作品のIP(知的財産権)は同社に帰属する。つまり、ゲームや漫画などの二次的な制作物の収益などはすべて同社のものとなる仕組みだ。