文春オンライン

札幌ドームとの19年があったから…私たちがともにした楽しさ、苦しさ、素敵な日々

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/10/02
note

もう二度とここでシーズン終了のセレモニーは行われない

 首位打者をほぼ確実にしている松本選手が7回代打で打席に入る。これで規定打席に到達。ショートゴロで苦笑いでベンチに戻るとチームメイトからグータッチが次々と。7月に自打球で骨折した左膝は完治していないと聞く。満身創痍でのタイトル獲得。これまでも苦労の多い選手だった。すべてをわかっているファンから惜しみない拍手が松本選手に送られた。

 そしてそれは相手チームにも。レアード選手が代打で出てきて盛り上がり、岡選手が出てきてまたまた大拍手のスタンド。井口監督の計らい、岡選手はプロ野球生活を、レアード選手は日本での野球生活を始めたのがファイターズだった。札幌ドームには本人もファンもたくさんの思い出がある。

 試合が終わりセレモニーが始まる。もう二度とここでシーズン終了のセレモニーは行われない。もしかするとまたここで試合をすることはあるのかもしれない。でもその時はもうホームではないのだ。

ADVERTISEMENT

 選手の場内一周は涙のスイッチを入れるのにぴったりのシーンなのに、歩きながらマイクを持つ杉谷選手のパフォーマンスでそれどころじゃなくなる。ファイターズらしい。

 その後の、BIGBOSSのサプライズ。開幕投手の発表には本当に驚いた。エスコンフィールド北海道の幕開けは加藤投手に任された。

札幌ドームがあったから、こんな素敵な毎日を送れた

 全てが終わってから、選手がバラバラとグラウンドに出てきてプライベート用と思われる記念撮影をしていた。ポンセ投手はマウンドの土をポケットへ。ノーヒットノーランを達成した球場だ。シーズン終了を待たずに、翌日、アメリカへ帰国。土はいいお土産になっているだろうか。

 ファイターズが東京からの移転を模索していたあの時、札幌ドームが存在しなければ、北海道は候補にも挙がらなかったに違いない。札幌ドームがあったから、私たちはファイターズと出会えて、こんな素敵な毎日を送れた。札幌ドームとの19年があったから、これからも私たちとファイターズの歴史は紡がれていく。

 人は簡単に新しいことに慣れる。きっとあと何か月もすれば今のこの気持ちは薄らいでしまう。だからここにしっかり記しておこう。

 札幌ドーム、楽しい時間、苦しい時間、あなたと共有してきました。その全てに感謝しています。心を込めて、19年間ありがとうございました。その時が来るのか来ないのか今はわからないけれど……きっとまたいつか。そして何度言っても足りないけど最後にもう一回、ありがとう、札幌ドーム。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2022」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/57721 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

札幌ドームとの19年があったから…私たちがともにした楽しさ、苦しさ、素敵な日々

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!