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「松田さんが来てから雰囲気も全然違う」

 現に、選手やスタッフも口々に松田選手の存在の大きさを語っていた。福岡出身のルーキー仲田慶介選手は、“生の熱男”に感激していた。

「松田さんが来てから雰囲気も全然違う。凄いです。想像以上でした。(声の)内容もですし、タイミングとかも全部。真似しようと思っても簡単には出来ないです……」

 それでも、松田選手と過ごす3週間の中で、共にノックを受けたり、積極的にコミュニケーションを取ったりして、少しでも吸収しようと食らいついた。元々外野手の仲田選手は、内野に挑戦する中で、松田選手のような元気がより必要だと痛感していた。

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「松田さんが声を出してくれるとプレーもしやすい。気持ちが乗った状態でプレーできる。失敗してもどんどん声を掛けてくれるんです」とホットコーナーの役割の大きさを知った。

内野ノックを受ける松田選手と仲田選手 ©上杉あずさ

 また、攻撃時は打ってホームインしたり凡退してベンチに戻ってきたりした選手に、松田選手は「はい、すぐ声出すぞ」と“声休憩”する暇を作らせなかったという。声を出すよう促し、出ていなかったら指摘する。熱男の流儀は徐々に浸透し、自然とみんなが良い声を出すようになっていったという。

 それは、2軍だけにとどまらない。

 2軍遠征に帯同せず、筑後に残留して3軍と共に練習をした時も、熱男魂を燃やした。育成の舟越秀虎選手は、「1人で3軍の雰囲気を180度変えてくれた」と感動していた。松田選手が1人加わっただけで、一生懸命の中にも“Enjoy Baseball”が溢れた。若い育成選手たちの意識にも大きな影響を及ぼしてくれたのだった。

みんなを笑顔にした熱男のON THE STAGE

 たった1人の選手が一瞬で雰囲気を変える。

 9月24日のウエスタン・広島戦。1、2軍通じて“今季第1号”となる逆転2ラン本塁打を放つと、タマスタ筑後の盛り上がりは最高潮に。「2軍戦でこうも盛り上がるのか」と思う程、鳥肌の立つ瞬間だった。ダイヤモンドを1周すると、ベンチ横の中継カメラの前でとびっきりの『熱男~』を披露。ここが2軍だろうと関係ない。熱男はどこにいても熱男なのだ。ベンチの若鷹も首脳陣もスタンドのファンも、みんなが歓喜する最高の『熱男』だった。

 試合後、タマスタ筑後では若鷹スピーチという1軍で言うところのお立ち台がある。マイクを持って自ら今日の感想やファンへの感謝を告げるのだが、この日の若鷹スピーチでマイクを持ったのは熱男だった。

「プロ17年目、39歳の松田宣浩です」と言って笑いを誘うエンターテイナー性もさすがは熱男。続けて、この日ウエスタン・リーグ新記録となる26号本塁打を放った後輩、リチャード選手のことについても触れ、ファンに拍手を求めた。

 後輩のことも称え、みんなを笑顔にした熱男のON THE STAGEは最高の時間だった。バットを持ってもマイクを持っても熱男だった。

 そして、松田選手は10月1日、タマスタ筑後での中日ドラゴンズ戦で「ホークスの松田」「ホークスの熱男」としてのラスト“マッチ”に臨んだのだった。

(※後編は10月8日公開の文春野球CSコラムにて掲載)

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