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「若い人がブースター接種を受けるのは、税金の無駄遣い」

「ワクチンの目的は、感染防止だけではありません。感染後の重症化を防ぐという大事な効果もある。メディアでは抗体やPCR陽性者数の話ばかり出てきますが、重症化を防ぐためには、抗体だけでなく細胞性免疫が重要です。ウイルスに感染した細胞を殺してウイルスの増殖を止める働きをする免疫細胞にT細胞というものがあります。このT細胞はワクチン接種によって一度コロナウイルスのタンパク質を認識して記憶すれば、次からはオミクロン株のように変異したウイルスにも反応し、しかもその免疫記憶は長期にわたって続くことがわかってきました」(吉村教授)

 感染すれども重症化せず、はワクチン接種の大きな目的のひとつなのだ。ワクチン製造大手のアストラゼネカ社のCEOパスカル・ソリオ氏は、英紙のインタビューにおいて「ワクチンを接種した健康な人の重症化に対する免疫は、確実に1年以上続き、場合によっては3~4年は持続する可能性がある。(高齢者ではない)若い人がブースター接種を受けるのは、税金の無駄遣いだ」と踏み込んだ発言をした。

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 実際、アメリカではワクチンに対する考え方が変わりつつある。ロイター(現地時間2022年9月6日付)の報道によると、ホワイトハウスで新型コロナ対策に従事する専門家は、「大多数の国民にとって、年1回の新型コロナワクチン接種が年間を通じて重症化をかなりの程度防いでくれる段階を迎えつつある。これは重要な節目だ」と語っている。

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若い人や子供は過度に感染を恐れる必要はない

「ワクチンは重症化を防ぐためのものと考えるべきです。2022年7月14日にネイチャーに掲載された論文で、ワクチンを接種したのちにオミクロン株に感染すると、オミクロン株に対する抗体だけでなく、デルタ株やベータ株など、幅広い変異株に対する抗体ができることが報告されています。未接種の状態で感染した場合は、ほぼオミクロン株に対する抗体しかできませんが、ワクチンを接種してから感染すると重症化しにくいうえに、“ユニバーサル抗体”と呼ばれるものができて、今後流行る未知の変異株に対しても、防御できる可能性が高まります」(吉村教授)

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 吉村教授は重ねて言う。

「だから、ワクチンを接種した人は、オミクロン株にどんどん感染した方がいい――とまでは言いませんが、科学的な知見としてワクチンを接種した上で感染すると優れた免疫がつくことは事実です。死亡リスクの高い高齢者は別ですが、若い人や子供は過度に恐れる必要はないと思います。欧米諸国はそのように判断して、厳戒態勢を緩めているのではないでしょうか」

 9月27日の安倍元首相の国葬では、日本政府は世界中のVIPにマスク着用を求めた。献花の列にならぶ参列者たちの口元もしっかりと白く覆われていた。諸外国との認識の差は大きい。