その間もデモ隊は武道館前をゆっくりと練り歩いていたが、交差点には国葬賛成派の一団が待ち構えていた。賛成派は「九段下攻防戦」とかかれた幕を掲げ、「帰れー」「国に帰れ」の大合唱を繰り広げる。
13時頃にはデモ隊は一度解散したが、国葬が始まる14時頃、その一部が再び武道館から近い九段下交差点に集まりはじめた。すると体格のいい短髪の男性が、拳を振り上げながら「テメーら、またきたのか!」と近づいていく。国葬賛成派と反対派が次々と集まる中、警察が両者の間に割って入りロープで引き離し、互いに睨み合う膠着状態に陥った。
デモの衝突を見ていた大学生の男性はこう語った。
「ツイッターで騒がれていたから見に来ちゃいました。『帰れ』『バーカ』と怒号が飛び交い、賛成派も反対派もスマホで互いに動画を撮りあって、その様子をマスコミやYouTuberっぽい人も撮影していてカオスでしたね。個人的にはどちらかというと国葬は賛成。亡くなり方も衝撃的だったし、小さいころから安倍さんを知っていてショックだったので。水鉄砲で安倍さんを射的するパフォーマンスも見ました。あれは倫理的にどうなんですかね……」
武道館前だけでなく、国会正門前でも約2600人が集まり、国葬の中止を訴えたという。
皇室からは秋篠宮ご夫妻、佳子さまらが参列
会場の外でデモ隊同士の激しい衝突が起こる間も、武道館では着々と国葬の準備が行われていた。
14時前に安倍元首相の遺骨を抱いた昭恵夫人が武道館に到着。19発の弔砲が鳴る中、葬儀委員長である岸田文雄首相が出迎えて会場入りした。松野官房長官が開式の辞を述べ、国葬が始まった。
弔問客として訪れたのは、218の国・地域などから約700人、国内からは約3600人の計約4300人。秋篠宮ご夫妻、佳子さまをはじめとする皇族方7名も参列されたが、野党第一党の立憲民主党や共産党などの議員は国葬の根拠が明確でないことなどを理由に多くが欠席した。