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 国葬の実施を巡っては、その正当性や国会での審議を経ずに閣議決定された経緯について議論が紛糾。約16億6000万円の経費が全額国費でまかなわれることも、批判の対象となった。9月に行われた報道各社の世論調査では、国葬に「反対」と答えた人の割合がすべての媒体で50%以上という結果に。国民の間で意見が二分されたまま、国葬当日を迎えることになった。

 前日の26日、岸田首相がアメリカのハリス副大統領らと会談している間にも、国葬反対派によるデモや集会が全国各地で行われていた。

武道館からほど近い錦華公園をスタートした「国葬反対」デモ ©文藝春秋

「国葬は反対ですね。モリカケとか全部疑惑がおわった後ならともかく、うやむやになったままでやるのはどうかと思うんです。しかも今は静岡とか台風の被害が大変なことになっていますよね、そんなときに何で国葬なんてしてるのか……」(当日に「国葬反対」を掲げたデモに参加した20代男性)

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 国葬当日の午前11時30分、千代田区の錦華公園にはおよそ300人の人々が集まり「国葬なんてありえない」「アベ国葬を許さない」と書かれたプラカードを掲げていた。集まった人々の年齢層は高く、年季のはいった黄色いヘルメットをかぶる人々や、車椅子姿の参加者も見受けられる。

 デモ隊が公園を出発したのは12時ちょうど。参加者たちが「政治の私物化するなー」「赤木さんの責任とれー」と声を上げると、沿道からは50代とみられる女性たちの「そうだー!」という声もあがった。

 一方で、会場近くの大学に通う女子大生3人組は、「国葬の話とかどうでもいいし、(デモって)見ていてちょっと怖い」と、遠巻きに眺めていた。

安倍元首相の顔がプリントされたTシャツを着て、水鉄砲で撃たせている若者たち ©文藝春秋

「射殺された人を射的のネタにするのは面白いかなって」

 デモ隊が歩きだして30分後、武道館近くの交差点に到着するとデモ隊の興奮は最高潮に。デモ隊の近くにいた安倍元首相の顔写真がプリントされたTシャツを着た数人の若者は「射的」と書かれた幟を掲げ、周囲の人に水鉄砲を渡して、安倍元首相の写真を撃たせている。

 Tシャツを着て水を浴びていた男性に話を聞くと、21歳の大学生だという。

「どうせ国葬を止めることはできないけど、とにかく安倍をコケにしたいと思って安倍の顔を印刷したTシャツと水鉄砲で射的をやることにしました。射殺された人を射的のネタにするのは面白いかなって。頭おかしいと思われたり顰蹙買ったりするのは承知の上だけど、若者にしかできないことだと思いました」

 何人かが嬉しそうに水鉄砲を撃っていたが、警官の誘導もあり「射的」はまもなく終了した。