進化し増殖をつづけるオダジョー世界。あるいは謎でいっぱいの狭間(はざま)県。
こんなに早く『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』のシーズン2が観られるとはね。NHKも寛容になったのか、世の趨勢には抗えないのか。
狭間県警の鑑識課に属する警察犬オリバー(オダギリジョー)のハンドラーである青葉一平(池松壮亮)と視聴者には、オリバーは犬の着ぐるみ姿の酒臭いオジさんにしか見えない。
人語、しかも卑猥なNGワードを連発する警察犬がバディだなんて、高市早苗が総務相の頃なら、即座に関係者の首が飛んだな。
最大の謎は十一年行方不明の後に遺体で発見された北條かすみ(玉城ティナ)を殺したのは誰かだ。
さらにシーズン1のラストで、ヤクザの関東明神会、半グレのTMTと県警三つどもえの大乱闘直後に急死した明神会の若頭、龍門(松重豊)の体内からはトリカブトの毒が検出された。龍門は誰が殺した。
謎だらけなのに本筋とは恐らく無関係な大物俳優、新進スターたちがさらに大量に参入し、観る側の興味は謎解きから逸れていく。
冒頭のちょい後だ。電話で話す女の声がした。脚しか映さないけど聞き覚えがある。わ、松たか子だ。スベンソン蘭子という雑誌編集長だ。「そうかもね。そうね、そうね、そうかもねぇ」とシブがき隊のヒット曲を歌いだすシーンも。さすが松たか子。そんな鼻歌が絶妙に美しい。
ちょっと感動しちゃうくらい。でもな、これってドラマの展開とは絶対に関係ないよな。そう、松たか子の無駄づかいだ。ポトラッチって言葉が一時流行ったけど、俺たちを喜ばせるための贅沢な饗応かな。
県警の女性刑事、ゆかり(黒木華)が捜査現場に現れて、京都弁で「お疲れさんどす」と挨拶した後で、「わー、オリバー、きょうも可愛らしいわあ」と不潔な着ぐるみ犬を撫で撫でする場面も笑えた。「ほな、お仕事お気ばりやす」
オリバーが「エロいぞ」というと、事件の手がかりが見つかる。神社の境内に埋められた缶に隠されていた拳銃と片耳。まるでデヴィッド・リンチ『ブルーベルベット』の世界だ。神社の境内の片耳は、第三勢力の神々廻(ししば)配下の青年(高良健吾)のものだった。サイズが合うから拳銃と一緒に埋めたんだって。
今回のラスト。北條かすみは俺が殺したとヤクザの渡(仲野太賀)が叫ぶ。何人かの容疑者が逮捕されても、謎はまだまだ残るだろう。でもね、NHKも俺たち視聴者もオダジョー菌の免疫できてるから、謎の放りっ放しは、むしろ大歓迎だ。そして次のシーズンが作られ、映画化も。暴力と謎とコメディの共存。そんなオダジョー世界に、いま私たちは生息している。
INFORMATION
『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』
NHK総合 火 22:00~
https://www.nhk.jp/p/ts/ZPZJP2WJ9R/