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会社の金を約300万円も横領し…父親に「早くしなさい」と急かされ続けた女性の“悲惨な末路”

『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』より #1

2022/10/06

genre : ライフ, 教育, 社会

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恋人のために会社の金を横領

「ユカ、ごめん。もうダメだ。借金が……」

 同棲中の彼は涙ながらに告白した。就職できないストレスからギャンブルにハマり、相当な額の借金を抱えていたのだ。闇金融に手を出さざるをえない状況だという。

 ユカは「私が何とかするから」と言って彼をなぐさめた。けれど、あてがあるわけではない。そこで思いついたのが勤務先の会社の金を横領することだった。経理の仕事を任されていたユカは、「いつか返すから」「一時的に借りているだけ」、そんな言い訳を心の中でしながら帳簿を操作。少額ずつ自分の銀行口座に送金するという大胆かつ稚拙な犯行を繰り返した。 

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 横領を始めて3年目、会計監査により犯行が発覚することとなった。 

「こんなはずじゃなかった……」

 ユカはがっくりと肩を落とした。

もともと真面目で器用なユカだったが……

 ユカは、小さな頃から将来の夢や目標を持つことがなく、目の前のことをどうするかばかり考えていました。とくにやりたいこともありません。ただ、もともと真面目で器用なので、目の前の仕事に取り組めばそれなりの成果を出すことができます。それで、なんとなく「いまが良ければそれでいい」という気持ちで過ごしていました。

 まわりからは、取り立てて問題があるようには見えません。会社の上司も、「飲み込みも早いし、真面目にやってくれているから安心だ」という感覚だったのでしょう。 

 社内の信頼を得て、業務範囲も広くなってきた矢先です。会社のお金を約300万円も横領したのです。しかも、特別な細工をすることはなく、直接自分の口座に振り込んでいました。あまりにも稚拙に思える犯行です。会社のお金に手をつければ、いずれ発覚して検挙されることくらいわかりそうなものです。恋人の借金を返すためとはいえ、「もっと他に方法があるだろう」と言いたくなります。

 なぜ、こんな犯罪に向かってしまったのでしょうか。