9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬。韓国からは韓悳洙国務総理らが参席し、当日朝のテレビニュースでも取り上げられた。ただ、翌日、一面で報じた有力紙は2紙のみ。他社は、国際面でトップもしくは2番め、3番めの扱いだった。

 各紙、国葬を巡っては武道館内の国葬と国葬に反対するデモの写真を並べて報じ、見出しは「安倍最後の見送り4Kmの弔問の列…国会前では『国葬反対』デモ」(朝鮮日報、9月28日、以下同)、「安倍国葬の日、日本はふたつに割れた」(中央日報)、「最長寿総理VS右傾化の象徴…色あせた安倍国葬」(ソウル新聞)、「統一教会癒着・国税浪費騒ぎ‥安倍国葬、日本をふたつに割る」(京郷新聞)、「強行した安倍国葬 日本の世論だけを二つに割り」(ハンギョレ新聞)と、いずれも「分断」をキーワードにしていた。

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韓国で、「国葬」よりも関心が集まったこと

 内容は国葬の様子を淡々と伝えるもので、岸田総理の弔辞の中からは、安全保障関連法の推進により「国際秩序の維持増進に世界のだれより力を尽くした」(ソウル新聞)や「防衛庁を防衛省に昇格させ、国民投票法を制定して憲法改正へ向けた、大きな橋を架けた」(朝鮮日報)などを引き、弔意を強要するという反発を避けるため、自治体や学校などへ弔旗の掲揚や休校を要請しなかったことなどに触れていた。

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 韓国でむしろ注目が集まったのは“国葬後”の日本政府の動きだ。

 進歩系のハンギョレ新聞は、「切羽詰まる岸田…韓日関係改善に余力なし」と報じ、「尹錫悦政権は無理に日本との関係改善を慌てて進めるより、落ち着いて待つ必要があるという声もあがる」と書いている。中道紙記者は言う。

「安倍元首相の国葬により、日本の世論がこれほど割れたのを初めて見ました。それだけに政府への影響がどう出るのか、韓国政府も注視しています。

 韓国は尹政権になってから、日本との関係改善に積極的に乗り出していて、この政権で改善したいという意志は固い。徴用工問題で現金化が待ったなしの状態になっていますから、慌てずにといっても、早急に事を進めなければならない。そのため、気になるのは、日本国内の動向で、これから岸田首相の支持率はどう動くのか、そして今後の安倍派の動きです」

韓国政府がもっとも怖れていることは

 岸田首相の支持率がこのまま下がれば、党内での求心力はさらに弱まり、韓国に強硬な安倍派に押されてしまうのではないかという懸念だ。