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 2018年10月30日、韓国の大法院(最高裁判所)で原告の元徴用工が勝訴したのをはじまりに、翌月には元勤労挺身隊員も大法院で勝訴。この裁判で被告となった三菱重工業の韓国内資産の現金化への手続きが着々と進んできたのは周知のとおりだ。

 この8月には、現金化を実行させる最終判決がでると見られていたが、大法院は延期を発表。韓国政府は7月に裁判所に最終判決を自制してもらうことを目的とした意見書を提出しており、裁判所はそれを受けていったん保留したとみられている。

 しかし、韓国政府がもっとも怖れているのは、年内には裁判所が最終判決を出し現金化の実行が可能になってしまうことだ。もしそうなれば、日本との関係改善は修復不可能になると囁かれている。

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©JMPA

尹政権の外交ブレーンが語ったこと

 日本研究者として著名な陳昌洙・世宗研究所日本研究センター長は、保守系紙「東亜日報」(9月22日)に「韓日 “最後の機会”という危機意識を持たなければならない」というタイトルの寄稿文でこう主張している。

「強制労働問題の解決はこれからも被害者の原則論の立場と現実的な代案が葛藤するよりほかない事案である。解決に重点を置くよりは葛藤を管理する姿勢が必要だ」

 解決に時間を要することを両国が認識し、管理すべきだとする。牽制球ともとれる。

 韓国政府が被害者との話し合いのために立ち上げた「官民協議会」では、元徴用工問題関連の解決案として、第三者が三菱重工業から債務を引き受ける並存的債務引き受け方式(従来の債務者の負債を免除させることなく、引き受けた第三者が同一の債務を負う契約)や、日韓基本条約で恩恵を受けた韓国企業と日本企業が自発的に寄付をする方式、そして、それらの方式が決まれば新たに財団を設けるのではなく行政安全省傘下にある「日帝強制動員被害者支援財団」がその手続きを施行する案などが出ていると伝えられている。

 尹政権の外交ブレーンである朴喆熙ソウル大学教授は、日本経済新聞紙上でこう語っている。

「韓国がすべてを解決しろと言われると(韓国)国民を説得できない。(中略)日本に新しい謝罪や反省を求めてはいない。日本側はすでに表明した歴代政権の談話を継承し、その精神を尊重したいとはっきり示すことも可能ではないか。日本も理解を示し、何かやりそうだという雰囲気を醸成できれば被害者団体も司法も時間をかけてみようという感じになれる」(日本経済新聞、9月19日)