文春オンライン

2022/10/10

 亀山Pより相談を受けていた、『太陽にほえろ!』でデビューの脚本家・君塚良一、そしてネクストを狙う織田の三者三様の思惑が、まさに合致し、ひとつを成したのが『踊る大捜査線』だった。

「これって本当に刑事ドラマなのかな?」

 1996年当時、テレビ誌の記者をしていた筆者は、このドラマの制作発表記者会見に出席している。その帰途、どのテレビ誌(当時は軽く5誌以上あった)の記者も珍妙な面持ちをしている。

「今度のこれって本当に刑事ドラマなのかな?」、「トレンディドラマっぽくもないよね?」、「『古畑』や土ワイ(テレビ朝日系で放送されていた2時間のドラマ枠『土曜ワイド劇場』の略)とも違う感じだし……」と、どの記者も年明けの’97年1月7日からフジテレビ系で新しく始まるこのドラマを掴み切れずにいる様子。実際、会見では

「刑事ドラマといえば『太陽にほえろ!』が有名ですが、その『太陽にほえろ!』や従来の刑事ドラマがやらなかったことをやっていきます」

「銃撃戦やカーチェイスもありませんし、毎回事件が起こったり、入れ替わり立ち替わり犯人が登場したりもしません」

「織田君と水野(美紀)さんのラブストーリー、上役である柳葉(敏郎)さんとの対立をメインにドラマを描いて行きます」

 等々……ここに列記しただけでも、それまでの刑事ドラマのイメージ、視聴者の持つ固定観念を根底から覆す発言ばかりだった。今にして思えば、この最初の記者会見の時点で、後に言葉として確立する“警察ドラマ”という新しい呼称(ジャンル?)が既に登場していたように思う。

デスクからは「あまり大きく扱う必要はない」の指示が…脳裏をよぎった前例

 編集部に戻ってデスクに資料一式と、カメラマンが撮影した会見写真を見せると、“あまり大きく扱う必要はない”との指示。だが筆者はそのとき奇妙なデジャ・ビュ感に襲われていた。

 別ジャンルで他局ながら、かの『美少女戦士セーラームーン』も当初はそういう扱いを受けていた。「今時こんなアニメが流行るわけもない」、それがデスクの言い分だった。「今時だからこそヒットしますよ」と答えた憶えがある。

 果たして『セーラームーン』は大ヒットした。なので“『踊る』も大ヒットするのでは?”というカンが働いたのだ。

 そのカンが確信に変わったのが、回を追う毎に微妙にアップする視聴率と、「『踊る』って結構面白いよね?」、「最初はどうなるかと思ったけど、いざ観たらすごくいいんだよね」という記者同士の会話を小耳に挟んだ瞬間だった。