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大地震が発生したとき「地下」と「地上」ではどちらが安全? 自然災害で命を守るために“本当に必要”な認識とは

『揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義』より #2

2022/10/07

genre : ライフ, 社会

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 多くの人は、緊急事態が発生すると茫然自失して、判断を停止してしまいます。「凍りつき症候群」と呼ばれる状態ですが、その結果、動けない時間が長くなればなるほど逃げ遅れてしまいます。

 2001年にアメリカで起きた同時多発テロ事件(いわゆる「9.11」)の際、1機目のジェット機が激突したビルよりも、2機目に激突されたビル内にいた人たちのほうが、迅速な避難ができました。最初のビルにいた人たちが、突然の事態に立ち往生してしまったのに対し、次のビルにいた人たちは少し前に起きた様子を見ていて、何が起きたのか理解できたからです。

 2004年12月に発生したスマトラ島沖地震で巨大津波が押し寄せたときも、波が目前に迫ってきているにもかかわらず走り出すことすらできなかった人が大勢いました。

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 緊急時には、1分1秒の判断の遅れが命取りになります。「人は凍りつき症候群に陥りやすい」という知識を持ったうえで、複数パターンをシミュレートしておくことが有効になります。

「空振り」を受け入れる姿勢を持つ

 地震の場合、大きな揺れが生じる前に、携帯電話やテレビ、ラジオなどが、緊急地震速報のメッセージを発してくれます。もっとも早い場合は揺れが始まる数十秒前に、地震の発生を知らせる機能です。防災上たいへん有効で、自分の身を自分で守るために活用することができます。

 

「3.11」以降、この緊急地震速報が出る回数が非常に増えました。気象庁は、緊急地震速報を受け取った地域すべてで震度3以上が観測された場合は「適切」とみなし、1か所でも震度2以下を観測した場合は「不適切」と評価します。この「不適切」評価が、「3.11」以降に増えました。

 これは、マグニチュード9・0という巨大地震が起こったことで余震が多発し、離れた地点でほぼ同時に余震が起きたことが原因です。現在のシステムでは、複数の観測データの分離がうまくできず、緊急地震速報の「空振り」がゼロにはなりません。

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