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「怖い話は『聞きたくない!』と思うくらい苦手だった」それでも私が“怪談と結婚した女”として怪談師デビューした数奇な運命

怪談師・深津さくらさんインタビュー #1

2022/10/10
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 あなたは、「怪談師」という職業をご存知だろうか。

 常識では考えられない、不気味で不思議な話の語り手——。それが怪談師だ。そう聞くと、稲川淳二さんを思い浮かべる人が多いかもしれない。

 そんな稲川さんから、「新しい時代がきている」と評価され、注目を集めているのが若手怪談師の深津さくらさん(30)だ。“怪談と結婚した女”とも称されるほど、怪談を愛する彼女。怪談との出合いや、怪談師になった経緯を詳しく聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)

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怪談師・深津さくらさん ©釜谷洋史/文藝春秋

◆◆◆

コンテストがきっかけで怪談師に

――深津さんは怪談師として活動されていますが、そもそも怪談師とはどんなお仕事なのでしょうか。

深津さくらさん(以下、深津) 私は主にテレビやラジオ、イベントで怪談を語っています。私自身は“第六感”が鋭くないので、人から聞いた話を中心にお話ししていますが、ご自身が実際に体験された話や、心霊スポットに行ったり事故物件に住んだりして、そこで見たものを語る方もいらっしゃいますね。

――ご自身はどうやって怪談師に?

深津 怪談の怖さを競い合うコンテストに参加したことがきっかけです。もともとは怪談を聞くのが好きな“聞き専”で、いろいろな怪談会に足を運んでいるうちに、怪談好きのお友達がたくさんできたんです。

 その中に、「事故物件住みます芸人」として有名な松原タニシさんや、怪談蒐集家のApsu Shusei(アプスー シュウセイ)さんもいらっしゃって。先に怪談師として活躍されていたおふたりから「今度コンテストがあるんだけど、深津さんも出てみたら?」とお誘いを受け、一般参加で出場しました。“聞き専”から“語り手”になったのは、それ以降ですね。ちなみに「怪談と結婚した女」という異名は、そのコンテストでつけられたものです(笑)。

 

――怪談会や怪談のコンテストがあるんですね。

深津 怪談を語るのに、立派な音響設備や大きな会場は必要ありません。怪談好きな人が集まれば、そこがもう“怪談会”になります。だから、怪談会は毎日のように行われているんです。「特定の地域にまつわる怪談」もたくさんあるので、東京だけでなく全国各地で開催されていますよ。