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「怖い話は『聞きたくない!』と思うくらい苦手だった」それでも私が“怪談と結婚した女”として怪談師デビューした数奇な運命

怪談師・深津さくらさんインタビュー #1

2022/10/10
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深津 今でも仲良しです。母はすっごく怖がりなんですけど、私のために地元の心霊スポットの情報や怖い話を集めてくれるんですよ(笑)。この仕事を始めてからは、母と地元の心霊スポット巡りをするのが帰省時の定番になりましたね。

――子どもの頃から絵に没頭した影響で、高卒認定試験後は美大に進学したのですよね。

深津 美大に入った理由はもちろん、絵が好きだったからです。でもそれとは別に、大好きな美術の道なら、小さい頃に孤独を選んでしまった私も、また人と関われるようになるんじゃないかと考えました。

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大学2年時に怪談を聞き「ワクワクしてきちゃって」

――深津さんが怪談を聞くようになったのは、大学時代だと伺いました。大好きな絵や人と関わるなかで、どうやって“怪談”と出合ったのですか?

深津 大学2年生の時、当時付き合い始めたばかりだった今の夫から「怪談を聞きに行こう」と誘われたんです。夫の行きつけのセレクトショップで、お店の常連さんや身近な人だけが集まる小規模な怪談会が行われるから、とのことでした。

 でも、先ほどもお話ししたように私はもともと怖い話が苦手で……。正直行くのが嫌だったんですよね(笑)。

――実際に参加してみてどうでしたか。

深津 怪談に対する印象がガラッと変わりました。実は、この時に怪談を話していたひとりがApsu Shuseiさんだったんです。私は当時、京都の大学に通っていたのですが、Apsuさんは関西地域の怖い話をたくさんしてくれたんですよね。

 淀川沿いで“奇妙なもの”を掘り起こしてしまったお話とか、JR京都駅に向かう普通列車に乗ったサラリーマンが、途中駅で見かけた不思議な光景のお話とか……。

 

 私にとって馴染みのある場所や地域がたくさん出てくるから、情景がありありと浮かんで、とても興味深く聞けたんです。

「普段、私が何気なく暮らしているこの土地にも、不思議なことがたくさん起こっているんだ」と思うと、怖いと感じるよりもワクワクしてきちゃって。