もともと怪談や怖い話は苦手だった
――昔から怪談が好きだったのですか?
深津 いえ、好きになったのは大人になってからですね。子どもの頃はむしろ苦手で……。周りの人が怪談で盛り上がっていたり、テレビで怖い話特集をやっていたりしたら、「聞きたくない!」と思っていたくらい。
――意外です。では、子どもの頃は何が好きだったのでしょう。
深津 とにかく絵ばかり描いている子でしたね。実は私、義務教育の9年間はほぼ不登校でした。高校にも通っていなくて、大学は高卒認定試験を受けて入っています。
学校に行ってなかった小中高の12年間は、絵を描いたり、美術館に行ったりする時間に費やしていました。
小学1年生で不登校になったきっかけ
――なぜ不登校に?
深津 小学校1年生の時に担任だった先生が、かなり独裁的な人で……。先生が「正しい」と思うことから少しでも外れた行動をすると、クラス全員の前で怒られるような環境でした。私が太陽の絵を赤いクレヨンで塗りつぶしたら、「太陽はオレンジでしょ!」と突然怒鳴られたこともあります。
――それは理不尽な……。
深津 それでも、しばらくは頑張って学校に行っていたんです。でもある時、学校から家に帰った途端に涙が止まらなくなってしまって。自分でも精神的な限界が近いことに気付いて、1年生の秋には全く学校に行かなくなりました。
不登校になって、家に籠もって絵を描いてばかりいたから、周りからいろいろ言われるようにもなりました。このままじゃバカになるとか、ちゃんとした大人になれないとか。もちろん、どれも私を心配してかけてくれた言葉だと思います。でも、当時の私はその言葉を聞いて、自分のことをとても罪深い存在のように感じてしまったんです。
――ご家族は心配されたのではないでしょうか。
深津 母にはすごく助けられましたね。母は私に、「罪悪感や劣等感を抱く必要はない。『学校に通う』という選択をしなかっただけで、あなたは絵を描いたり、本を読んだり、勉強したり、ちゃんと日々を過ごしている。あなたの人生には何の汚点もない」と声をかけ続けてくれました。私が自分の気持ちを大切にして前に進めたのは、母の存在が大きいと思います。
――お母さまと良い関係を築かれているのですね。