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身近で起きた不思議な話に衝撃を受けた

――自分の身近にある“不思議な出来事”に興味を持った?

深津 そうですね。それまでは怪談のことを、どこか遠い世界で起きていた昔話みたいなものだと思っていたんです。もしくは、2ちゃんねるの「洒落にならない怖い話」で語られていたような、実際にあったかどうかもわからない匿名性の高いものだ、と。どちらにしても、「私には関係ない」と思っていました。

 でも怪談会に参加して、自分の身近で起きた不思議な話を聞いてみたら、これまで暮らしていた環境の見え方が変わるほどの衝撃を受けて……。こんなに身近な場所で、身近な人たちが体験しているなら、自分に関係ない話とは言えないなって感じたんです。

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 それに、いつもセレクトショップで会っている店員さんや常連さんが「実は僕もこんな体験をしたことがあってね」と話をする姿がすごく新鮮で。普段の会話の中では見られない、その人の新たな一面を垣間見れた気がして、なんだか嬉しかったんですよね。

 それから、「怪談は怖いけど面白くて、自分の身近なものなんだ」って興味が湧いて。「もっといろいろな話を聞きたい!」と思って、“人の不思議な体験”を集め始めるようになりました。

不思議な体験は「たまたま出会った人にも聞いちゃいます」

――不思議な体験はどうやって集めているのでしょう?

深津 最初は身近な友人に聞いていましたが、今では飲み屋で隣の席になった人や美容師さん、タクシーの運転手さんなど、たまたま出会った人にも聞いちゃいますね。

 

――もともと初対面の人にも躊躇なく声をかけられるタイプですか?

深津 いえ、まったく。不登校の時期が長かったので、同じくらいの年の人と話すのは特に苦手でしたね。制服を着た学生を見ると、逃げるように隠れていた時期もありました。

 でも私の夫は、人とコミュニケーションを取るのが大好きで。それこそ、飲み屋で近くの席の人に声をかけて、すぐに友達になっちゃうような人なんです。そんな夫と付き合うようになってから、私もいろいろな場所に行ったり、人と話したりする機会が増えて、少しずつ世界が広がっていきました。私が怪談に出合うことができたのも、夫が怪談会に誘ってくれたからですしね。(#2に続く)

撮影=釜谷洋史/文藝春秋

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