昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「愛犬家連続殺人犯と親交が…」「5回も死体に出遭った」 稲川淳二が“テレビのいじられキャラ”から、“怪談話の第一人者”へと変異したワケ

『藝人春秋』より#1

2021/08/22

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ, 読書, 働き方

 8月7日、メンタリストのDaiGoは、自身のユーチューブチャンネルで、「ホームレスに存在価値はない」「生活保護の人たちに食わせるくらいなら、猫を救ってほしい」などと発言し、批判が殺到した。

 ホームレスや生活保護受給者など、社会的弱者を切り捨てるような発言を目にした浅草キッドの水道橋博士は、ある芸人の姿を思い出したという。その芸人とは、怪談話で知られる稲川淳二氏。実は、稲川氏の活動の影には、難病を抱える次男の存在があったのだ。水道橋博士が芸人の姿を紹介した書籍『藝人春秋』(文藝春秋)より、稲川氏の家族の実像を紹介する。(全3回の1回目/2回目を読む)

◆◆◆

水道橋博士 ©文藝春秋

深夜番組『マスクマン!』、それは異色の番組だった

「今回、稲川さんの芸人魂溢れるサービス精神の底にある人生観を知りたいんです! それで前もって資料は念入りに読んでいるんですが……。あのぉ……全てをお話ししていただくかどうかは稲川さんのご判断で後から編集で切って頂いても結構ですし……本当にもし差し支えなければなんですが……お任せします」 

 収録本番前、テレビ局の控え室でボクは稲川淳二さんに持って回った言い方でお伺いを立てた。

 日本テレビの深夜番組『マスクマン!』の収録直前の会話である。

 2002年、『マスクマン!』の「異人たちとの夏」というコーナーに、ボクたちは半年間、準レギュラーで出演していた。

 それは今、振り返ってみても異色の番組であった。

 42インチのモニターと椅子しか置かれていないスタジオに司会のテリー伊藤とオセロの中島知子が立っている。

 そしてゲストが現れ、椅子に座りモニターと向き合う。

 そこには過去の自分自身、亡くなった親など、ゲストにまつわる人物が精巧なCGになって映し出され、現在の自分と過去の自分が時空を越えバーチャルに対話する─―という演出だ。

 ボクたちの役割は、モニター上のCGの声のアテレコ。

 浅草キッドとしての存在は視聴者にはオフレコで、文字通りの正体不明の「マスクマン」覆面出演であった。

 タレントとしては「おいしくない」仕事であったが、生来のお笑いルポライターの血が騒ぐ役目だった。