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「人の病気や哀しさを活字にして、泣けるなんて言われると…」 水道橋博士が50歳の区切りで感じた、理不尽な“幸不幸”

「人の病気や哀しさを活字にして、泣けるなんて言われると…」 水道橋博士が50歳の区切りで感じた、理不尽な“幸不幸”

『藝人春秋』より#3

2021/08/22

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ, 読書, 働き方

note

 8月7日、メンタリストのDaiGoは、自身のユーチューブチャンネルで、「ホームレスに存在価値はない」「生活保護の人たちに食わせるくらいなら、猫を救ってほしい」などと発言し、批判が殺到した。

 ホームレスや生活保護受給者など、社会的弱者を切り捨てるような発言を目にした浅草キッドの水道橋博士は、ある芸人の姿を思い出したという。その芸人とは、怪談話で知られる稲川淳二氏。実は、稲川氏の活動の影には、難病を抱える次男の存在があったのだ。水道橋博士が芸人の姿を紹介した書籍『藝人春秋』(文藝春秋)より、稲川氏の家族の実像を紹介する。(全3回の3回目。1回目2回目を読む)

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この話題に踏み込むべきか否か…

 マスクマンとして、この話題は、ボクらが手駒として踏み込むべき話題なのか。

 いいのか! いいのか? いいのか! いいのか? 

 本番まで臓腑を抉られるような葛藤が続いた。

 そして、冒頭に書いた通り、収録前の控え室で、ボクは稲川さんに手の内を明かした。

 2002年8月15日─―。

 ゲストに稲川淳二を迎えた『マスクマン!』本番。収録はトントン拍子で進んだ。

 懐かしのリアクション芸の実演、ヨイショ芸の再現など、さまざまな持ちネタに応じて、モニターのCGマスクは、30歳の頃の稲川淳二、亡き父・稲川良一さんなどに変貌し、この一夜限りの再会に会話が弾んだ。

©文藝春秋

 そして、あの独特の間と語り口による怪談話に突入した。

 その後、おどろおどろしい笛の音と共に、ボクと玉袋が扮した陰陽師がモニター上に降臨し、現在の稲川さんに語りかけた。

「オイ! オマエの周りには無数の霊が集まっているぞ。このままだと死ぬぞ! 霊の本やビデオを出すために成仏していない他人の先祖霊に接触しているだろ?」

 暗に問題になっている盗作疑惑に触れつつ、さらに詰め寄った。

「その霊がオマエに取り憑いているのだ! オマエがまだ生きているのは、オマエの先祖霊が他人の先祖霊と戦って守ってくれているからなんだよ! 先祖霊のためにも、もう怪談話とか霊に関わる仕事はやめるべきだ!」

 すると、今まで沈黙していた稲川さんが口を割った。

「んー。でも、もーちょっと知りたいことがあるんです。怪談話じゃない部分で何かがあるのかもしれない。っていうのはね、霊って日本では幽霊って言うけど、海外ではね“エネルギー”いわゆる“力”って呼んでるんです。ワタシね、15年前にあることがあって、それを見てみたいと思ってるんです」

「……………」

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