文春オンライン
「人の病気や哀しさを活字にして、泣けるなんて言われると…」 水道橋博士が50歳の区切りで感じた、理不尽な“幸不幸”

「人の病気や哀しさを活字にして、泣けるなんて言われると…」 水道橋博士が50歳の区切りで感じた、理不尽な“幸不幸”

『藝人春秋』より#3

2021/08/22

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ, 読書, 働き方

note

僕は『藝人春秋』を出そうと決めた

 それでね。記事の最後にね。こう書いてるんですねぇ──。

「私の仕事の関係とか、いろいろあって、女房と次男とは残念ながらもう何年も別居しています。別に夫婦仲が悪いわけじゃないですよ。次男は今年、26歳になるんですが、重度の知的障害者です。こないだね、次男が生活実習所で作った簀の子を女房が送ってくれました。私は最低の父親ですが、そんな小さな成長の証しが、心からうれしい。優しくしてくれとは言いません。せめて、嫌がらないでください。忘れないでください。

 私がね、今回、こんなみっともないことも、あえてお話ししたのは、みなさんに分かってほしいという一心、それだけなんです。ごめんなさいね。世の中に要らない人、要らない命なんてないんですよ。それだけは、分かってください」

 そんとき、ワタシが手に持ってる新聞に突然、黒いシミがボタボタッて広がったんですね!

 ウワァーーッ‼

ADVERTISEMENT

 ワタシの涙でしたよ。

 この文章、書いてからね、ずっと棘が刺さったまま、その後が気になってましたからねぇ。なんかこれで吹っ切れましたね。でもね、人前に自分を晒すとか、文章書くとかは、お笑いとか、お涙とか、幸福だとか、不幸だとか、そういう分け方じゃないんだってやっと分かりましたね。もう、あるがままに、ぶつけるしかないんだって。

 これ読んでね、その時、ようやく思ったんですよ!

『藝人春秋』を出そうってね。

藝人春秋 (文春文庫)

水道橋博士

文藝春秋

2015年4月10日 発売

「人の病気や哀しさを活字にして、泣けるなんて言われると…」 水道橋博士が50歳の区切りで感じた、理不尽な“幸不幸”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春文庫をフォロー

関連記事