北の大地・北海道——。
北海道新幹線の札幌延伸に合わせて廃止になるとかなんだとかで騒がしくなっている函館本線の長万部~小樽間、通称“山線”。本線と言いながらも、現実には1日に数往復しか列車の走らない恐ろしいほどのローカル線だ。
だからどの駅を訪れてもひたすらローカルな空気ばかりが漂っているのだが、その中でもほとんど唯一といっていいくらいの存在感を持つ駅がある。新幹線駅ができることが決まっている、倶知安駅だ(“くっちゃん”と読みます)。
蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山の北麓にある倶知安の町から、クルマに乗って積丹半島方面を目指した。しばらくは“山線”に沿って走り、小沢駅という小さな駅があるあたりで進路は西へ。そのまま国道276号をまっすぐ走ってゆく。
国道276号は、1985年に廃止された国鉄岩内線というローカル線の跡に並行している。岩内線はその名の通り、積丹半島付け根に位置している日本海沿いの町・岩内までを結ぶ。
岩内は古くからの港町で、日本でのアスパラガス栽培発祥の地などとしてもその名を残す小さな町だ。が、今回の目的地は岩内ではなく、そのすぐお隣。海に沿って積丹半島にちょっとだけ入った先にある、泊村である。
じつは日本で“最初の”鉄道が通った場所「泊村」
泊村は、北海道で唯一の原発がある村だ。1989年に操業を開始した北海道電力泊発電所。人口は1500人いるかどうかという過疎の村ではあるが、原発のおかげもあって財政は実に豊かで、北海道内で唯一の地方交付税不交付団体なのだとか。
そんな原発の村・泊村へは、海沿いの国道229号を辿っていけばすぐに着く。全国津々浦々、どんなところにもよく整備された国道があるというのは、日本の素晴らしいところだと思うのだが、どうだろうか。ちなみに泊原発は泊村に入ってすぐ、国道からは小高い山で隔てられた海の際に建っている。
原発の脇を抜け、左手に日本海を見ながらしばらく進むと、ちょっとした集落が見えてくる。別に何があるわけでもなく、むしろ細い川沿いにはかつて栄えていたのだろうと思わせる半ば廃墟と化した商店街。国道の下をくぐると海に出るのだが、石積みの岸壁がわずかに残る港があって、日本海の荒波が押し寄せる。