日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2022年11月号より一部を公開します。

◆◆◆

「オール財務省」が一丸

 年末に本番を迎える防衛費増額と安全保障三文書の改定に向けた有識者会議の第1回会合が首相官邸で開かれた。

 首相官邸に有識者会議を設けるのは外務省と財務省の連係プレーといってよい。

ADVERTISEMENT

財務省 ©共同通信社

 難題が山積する議論をリードするため、秋葉剛男国家安全保障局長(昭和57年、外務省入省)が財務省の茶谷栄治事務次官(61年、旧大蔵省)と手を握った。

 官邸には岡野正敬官房副長官補(62年、外務省)が控え、財務省は藤井健志官房副長官補(60年、旧大蔵省)を置くなど万全の体制を敷く。

 実務面でもエース級を投入する。財務省は新川浩嗣主計局長(62年)を筆頭に、防衛担当で菅義偉首相秘書官も務めた寺岡光博主計局筆頭次長(平成3年)がスタンバイする。加えて「10年に一度の逸材」と評判の一松旬企画担当主計官(7年)までそろえる強力布陣だ。

「GDP比2%」防衛費の実現には、予算枠組みの組み替えから財源の手当てまで、膨大な作業が必要で、「オール財務省」が一丸となっている。

 年末、有識者会議の提言書には「防衛費増額の恒久財源を検討する」との一文が盛り込まれる予定だ。「恒久財源」は、法人税、金融所得課税、たばこ税増税が想定される。

 劣勢なのが防衛省だ。官邸にいる髙橋憲一官房副長官補(昭和58年、旧防衛庁)は「秋葉・財務省ライン」に対抗するには迫力不足だ。

防衛省 ©共同通信社

 安倍氏の首相秘書官だった島田和久前防衛次官(60年)は現在、官邸で内閣官房参与だが、内閣参与はいわば「飾り」の棚上げポストで実務には携われない。

 防衛省は萩生田光一政調会長の剛腕に期待をかけるものの、旧統一教会問題で足をとられる萩生田氏にどこまで期待できるか、予断を許さない。

萩生田光一氏 ©文藝春秋

 防衛論争の第一ラウンドは、陣立てから外務省と財務省の連合軍が制した形となった。