1ページ目から読む
2/2ページ目

「何もやっていない政権なのに、何もできない状態に」

 今夏以降に霞が関でしばしば耳にするのが「三兄弟」のフレーズ。岸田文雄首相が打ち上げた「防衛費増額」「GX移行債」「少子化対策」のことで、いずれも“強大な”財源確保策が避けられないことから名付けられた。優先度には差があり、出遅れ気味なのが少子化分野だ。

岸田首相 ©文藝春秋

 少子化対策は岸田政権下の早い時期から動き出した。今年1月1日付で山崎史郎氏(昭和53年、旧厚生省)を全世代型社会保障構築本部の総括事務局長に起用。介護保険創設の立役者であり、嶋田隆首相秘書官(57年、旧通産省)とも気脈を通じる山崎氏は、急ピッチで進む人口減の対策として子育て給付拡充を主張。非正規雇用者・フリーランスらも育休給付対象に加えるべきだとする。

 事務局には菅前首相に長年仕えた鹿沼均氏(平成2年、旧厚生省)が審議官で着任。実務体制も整え、「子育て予算倍増」を鼻息荒く公言してきた首相だが、故安倍晋三元首相や米国の圧力で防衛予算増額に迫られ、少子化対策は「来年に道筋を示す」とトーンダウンした。

ADVERTISEMENT

 来年度から出産費用に充てられる「出産育児一時金」(42万円)を増額する方針だが、過去を振り返れば、一時金の増額を追いかけ出産にかかる医療機関の価格設定は上昇した。「今回も同じ轍を踏む。少子化対策の実効性には乏しい」(厚労省幹部)と冷めた声が相次ぐゆえんだ。

 岸田政権は国葬実施や旧統一教会と自民党との密接な関係が世論の離反を招き、「政権末期的」(自民党筋)な様相を呈する。「三兄弟」の取り扱いさえ覚束ない有様に「何もやっていない政権なのに、何もできない状態になってきた」(経済官庁幹部)。

 霞が関に漂う失望感は深い。

「霞が関コンフィデンシャル」全文は、「文藝春秋」2022年11月号と「文藝春秋 電子版」に掲載しています。