ニコ生は誹謗中傷に心が折れて、21歳でやめてしまったが、やっぱり自己承認欲求はあって、会社員をしながらもTwitterなどでちょこちょこ発信はしていた。僕のTwitterを見た芸能関係者から何度かスカウトもされたけれど、タレントは全部断っていた。何度もDMでタレントを勧めてくる人があまりにしつこいので、こうなったら一回直接会って断ろうと、池袋の居酒屋で話すことに......。

 どんなに熱心にタレントを勧められ、チヤホヤされても、僕は「やる気ないんで」「いいです」「興味ないです」を連発して、席を立った。すると、僕が居酒屋を出てすぐに、その人から「ブラス、俺を見て興奮しただろ。勃起してたな」とメッセージが来た。「はぁ!? 全然タイプじゃねぇし! 」と腹が立って、言い返すために居酒屋に戻ってキレたのだが、彼は僕を引き留めるには暴言を吐いて戻ってこさせるしかないと思ったらしい。つまり、彼の策にハマったのだ。

 そこで、タレントではなくて「コラムニスト」でやっていかないかと提案されたのが芸能関係の仕事をするきっかけだ。今でもその“策士”は、僕が立ち上げた芸能事務所でサポートし続けてくれている。時には騙されたと思って人を信じてみるのも大事なことだ。

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マツコ・デラックスの意外な“弱み”

 マツコ・デラックスさんが昔から大好きだ。好きすぎるがゆえに、上京直後『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系) の番組観覧に参加したこともある。『アウト×デラックス』の初めての収録は本当に緊張した。レギュラーで出演するようになって、マツコさんのすごさを目の当たりにするようになった。

マツコ・デラックスさん

 ほかの大御所MC さんとお仕事させていただくこともあるが、マツコさんは自分ばかりが前に出たり発言したりするのではなく、周りをフォローしたり、意見を言わせてくれたりする器の大きさがある。このトピックにはどの人が発言するのがいいかを見極め、全体を俯瞰で見渡している。最初こそ“噛みつき芸”のようなエッジの効いた風刺的な芸風だったかもしれないが、実はとても優しい人だと思う。

 自分には到底まねできないし、当初、僕はマツコさんを「こんなに面白くてすごい人は人間じゃない」くらいに崇めていた。もちろん今もすごいと思うことはたくさんあるけれど、実はマツコさんにも弱みがある。興味のないことを深掘りすることを諦めることもあるし、時にちょっとゲストと話が噛み合わなかったりすることもある。実際に一緒に共演するからこそ見えたその部分が人間らしくて安心したし、親近感を覚えさせてくれたポイントでもあった。

『アウト×デラックス』の収録でも、うっかりマツコさんが二度三度同じ話をしてしまい、矢部さんに「それこないだも言ってたぞ」とツッコまれて「あらワタシったらどうしちゃったのかしら」と照れくさそうにする姿は神格化したマツコさんを人間として見られる絶好のタイミングだ。

 大好きなマツコさんだけれど、マツコさんの発言すべてに共感しているわけではない。マツコさんをテレビで見ていて、全然共感できないと思うこともある。

 マツコさんは自分に女性ファンが多いこともわかっていて、女性の味方をする発言の際、ときに必要以上に男性を下げる言い方をしているように見えることがある。「野郎どもがさ~」のような感じだ。もちろんマツコさん自身が自分の性別側を卑下しているということはわかるのだが、マツコさんのフェミニズムの説き方は僕にとっては少し乱暴に感じる。