「呼吸と声を鍛えりゃ良いんだよ」
若本 エンディングのテロップまで見ようという声優はなかなかいないんだよ。うまい子は多いよ。僕なんか入った時よりも、はるかにうまい。でもね、興味が持てるくらいのオリジナルな個性がないんだよ。それがないと、この世界で続けていけないというか頭抜けていかない。
声優はセリフの勉強をやっていれば良いというもんじゃない。一番良くない勉強の仕方は、台本をもらって、語尾がどうだ、出だしがどうだ、と言われて、また読んで。これじゃあ絶対に進化しない。
言い回しとかね、そんなのはどうでも良いんだよ。呼吸と声を鍛えりゃ良いんだよ。鍛えに鍛え込めば、セリフは後からついてくる。
これからは、ざらついた声とか、地獄から覗き込むような声とかね。カーニバルにいる奇人みたいな声とかね、そんなことのできる個性を持っている人が来てほしいなと思っているね。それから悪役。悪役が際立たないとね、もうヒーローが“ヘーロー”になっちゃう……。
――(笑)。
「本業はあくまでも声優」
若本 ハリウッドがなんでおもしろいかっていうと、様々な脇役……特に悪役がすごいんだよ。見ているこちらが思わず「この野郎」と思うような悪役なんだよね。男性も女性も、ものすごい迫力。
そういう声優が出てきてほしいんだよね。もう通り一遍のヒーローはいいよ。さわやかな裏にダーティさを秘めているというか。もっとオリジナルなキャラクターが欲しい。えぐってくるような声じゃないから、突き刺さらない……。
――最近はアイドル活動をする声優もいますが、若本さんはどう見ていますか?
若本 歌とか、アイドルっぽいイベントとか、そういうのは声優としての本業じゃないですよ。本業はあくまでも声優。ナレーションも含めてね。そういうのは副次的なお仕事だから。
――最近は俳優として活躍している声優もいますが、声優としての仕事を深める上で、役立つとお考えでしょうか?
若本 それはそれで良いんじゃない? でも本業の人にはかなわないよ。コロナ禍で、声優が司会した番組がたくさん出たけど、本業の人には敵わなかった。あくまでも声優は声優としての実力をつけなさいってことだね。
――若本さんの今の目標は何ですか。