“永遠の17才”の声優・井上喜久子さん。『らんま1/2』の天道かすみ、『ああっ女神さまっ』のベルダンディーに、しまじろうのお母さんなど、1988年のデビュー以来、数えきれないほどのキャラクターを演じてきた声優人生をふり返る初の自叙伝『井上喜久子17才です「おいおい!」』を発売した。

 競争の熾烈な声優業界で、どうキャリアを築いてきたのか。新人時代やキャリアの節目となった役、そして今の自分を作ったものは何か、詳しく聞いた。(全3回の1回目/#2#3を読む)

キャリア30年を超える人気声優・井上喜久子さんの人生を追った。

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2度の挫折が「声優になる」に火をつけた

──9月25日にお誕生日を迎えられたばかりですね。おめでとうございます。

井上喜久子(以下、井上) ありがとうございます! 17才になりました。

──「おいおい!」(笑)。声優業もデビュー35年目を迎えました。

井上 ここまで長く声優のお仕事を続けられて、ありきたりな言葉ですが、夢みたいです。新人の頃には想像すらしていなかったので。

──先日発売された初エッセイには、声優を志す前の時期には、紆余曲折があったと書かれています。

初エッセイ『井上喜久子17才です「おいおい!」』(画像:主婦の友インフォス)

井上 そうなんです。高校3年になったのに、大学で勉強したい気持ちにもなれず、就職する実感もわかず、自分でもよくわからないくらい何もできない時期がありました。

 秘書になりたいわけでもないのに、なんとなく秘書科のある専門学校に進んだあとに「やっぱり勉強がしたい」と短大に入学して。それも教育実習で「教師って難しいな」と挫折したんです。

──どうしてでしょう。

井上 授業中に教室の後ろで遊んでいる生徒を怒ったり、注意したり、そういうことも教師には必要なのに、私はできなかったんですよ。先生として毎日お仕事している方は本当に尊敬します。

──2回挫折を経て、そこから声優を志した。

井上 「私ってなんてダメなんだろう」と落ち込んでいる時に『アタックNo.1』の再放送を見て感動して、今ほどメジャーじゃなかった声優のお仕事に興味を引かれました。姉が持っていた雑誌に載っていた声優の養成所の募集を見て即電話して、そこからが声優道の始まりでしたね。

──その頃の井上さんにとって、声優の何が魅力でしたか?

井上 作品の裏方だからです。当時は、自分そのままで表舞台に立つのは想像できなくて。でも歌は好きだったし、学校の放送でしゃべったり、声で何かしたりするのは好きだったのが結びついたのかな。

──当時の養成所はどんな感じだったでしょうか。