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──『キャプテン翼』では少年時代の大空翼も演じています。

井上 もともと新人の頃から少女より少年がやりたかったんですよ。でも当時のマネージャーさんに「喜久子ちゃんは見た目が女の子っぽいから少女役でやった方がいい」とアドバイスされて、少年役は同じ事務所の別の新人が担当でした。

──年月を経て、しっかりとそこにたどり着いたわけですね。

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演じた役がまた別の役を呼ぶ

──声優を続ける上で、支えになったものは?

井上 まわりのみなさんが本当に優しくて。コンプレックスの塊だった私は支えられてばかりでした。

 アフレコスタジオは役者の座る位置が決まっていて、『らんま1/2』だと私の右が天道あかね役のノン子さん(日髙のり子)、左がシャンプー役のレイちゃん(佐久間レイ)だったんです。

 まずは一度テストで演じて、次にラストテスト、そして本番の流れでアフレコするのですが、私はテストでもうまくしゃべれない。本番でもやっぱり失敗。私だけそんなことが多くて、いつも「どうしよう、どうしよう」と言いながらあせりながら席に戻るんです。

──想像するだけで胃がキリキリしそうです。

井上 席に戻るとノン子さんが「きっこちゃん、このかすみお姉ちゃんのセリフは、この部分はゆっくり、ここでブレスだよ」って台本を見ながら教えてくれるんです。時にはやってみせてくれて……それが、もう言い表せないくらいありがたくて。ノン子さんはヒロインで一番大変なのに。

 林原めぐみちゃん、高山みなみちゃん、あの現場はみんなキラキラしてて、私だけが落ちこぼれでした。

『サクラ大戦3』でもノン子さんはメインヒロインのエリカ役で、元アイドルだから歌も踊りもすばらしいんですよ。私は歌はやったことあるけど、踊れない。そこでも手取り足取り教えてもらいました。関係性が全然変わってないです。

 

──佐久間さんも日髙さんと同じく、元アイドルですよね。

井上 2人ともNHKの音楽番組『レッツゴーヤング』で「サンデーズ」として一緒に出てました。2人とも私よりもベテランで、教えてもらってばかり。

 レイちゃんはスタジオからの帰り道が同じで、おしゃべりしながら電車で一緒に帰るのが毎度の楽しみ。いつも悩みを聞いて励ましてもらったのが心の支えでした。

 声優業界も、きっとどこかで熾烈な争いもあると思うんですよ。でも、あたたかい人達に囲まれて、演じた役が次の役を呼び、どんどんつながれたのが良かったですね。

写真=平松 市聖/文藝春秋
ヘアメイク=中村 友里香
 

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