1ページ目から読む
2/3ページ目

──家で喜久子さんがご指導することはある?

井上 最初の頃はつきっきりで教えることもありました。これまで強くあれこれ言ったことがなかったので、見たことのない私の一面がショックだったみたいです。「今までのママじゃない」って。

 でも現場で良くないことが起きるより、家で厳しくされて、本番に万全で臨めるほうが絶対にいい。本人も、声優の娘である自分が、親と同じ仕事に挑むことにプレッシャーを感じていたようですね。だからそこはダブルですごく大変だったはず。

ADVERTISEMENT

「私だったらあきらめていたかも」

──確かに、2世声優として見られるプレッシャーは大きそうです。

井上 すごくあったと思います。実力以上に期待の目で見られるし、デビューしたての頃は、私が演じていた役を若くしたような役もよくいただいていました。ただ娘自身は、私と違って元気っ娘なんです。

娘の井上ほの花さんが演じる『ウマ娘 プリティーダービー』のアストンマーチャン(画像:Cygames公式より)

──喜久子さんはおっとり、穏やかな女性の役が多かったですよね。

井上 娘はありのままの野生児みたいなところもあったので、今はそういったこともなくなりましたが、最初は役に合わせるのに苦労したようですね。

──2世声優の方ならではの悩みというか。

井上 親子でご活躍の声優もたくさんいらっしゃって、みなさんそれぞれの悩みもあれば、喜びもあるでしょうね。今はSNSもあるから、比較されているのを目にすることもあるし。でも娘は昔の私のようにウジウジ性じゃなくて、根っから明るい子だから、大丈夫かなって。

 昔の私が、今の娘の状況だったら「もう無理」なんてあきらめていたかも。娘を明るい子にしてくれてありがとう、神様!って感じです。

 私の勝手な考えですけど、声優って今はアニメや洋画の吹き替え、ゲーム以外にも裾野が広がってるじゃないですか。家族としてその活躍を見ていると、楽しそう、やってみたい、と思えるのかもしれません。

──自叙伝の中で、ほの花さんが幼い頃、喜久子さんが忙しくて触れ合う時間が短い時期もあったと書いてありましたが、こうして母と同じ職業を目指すのは、そうした時期があってもすごくいい関係性を築けたからじゃないかと。

井上 そうだと嬉しいですね。日中に会えない分、夜は必ず寝かしつけをしていました。もう信じられないくらい、その日に起きたことをずーっとしゃべってるんですよ。眠すぎて私のまぶたがくっつくのを指で無理やりこじ開けられて……(笑)。

──物理!(笑)。