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連載この鉄道がすごい

2022/10/23

genre : ライフ, , 娯楽

「すごいですね。でも、ドクターイエローに関しては、お応えいたしかねます」

 とのことだった。そして逆に質問されてしまった。

「どうしてドクターイエローが『しあわせの』なのでしょうか」と。

 JR東海によると、ドクターイエローが黄色い理由は、ほかの保線工事用車両と同じく「薄暗い時間帯や深夜に目立つ色にしているから」。安全上の色選択だ。見た人がしあわせな気持ちになってくれるのは喜ばしいけれど、そのために黄色にしたわけではない。

提供:JR東海

 しあわせと黄色。この2つはなぜ紐付いているか。

 色と運勢と言えば「風水」を思い浮かべる。「黄色は金運や恋愛運を上げる」というような話は、1990年代の風水ブームで定着した感がある。きっかけは1994年に荒俣宏氏が書いた『風水先生 地相占術の驚異』だった。翌年に建築士のDr.コパこと小林祥晃氏が家相や運勢の本を出版し、後にタレントとして活躍している。以降、風水はカジュアル化し、占いのひとつになっているけれども、本来は陰陽五行説に基づく思想で、建物や都市などの立地学らしい。

 昭和世代がすぐに連想する言葉といえば、映画のタイトル『幸せの黄色いハンカチ』だ。山田洋次監督。刑務所を出所した男(高倉健)が愛する妻(倍賞千恵子)に会いに行く。男は妻に「まだ待っていてくれるなら、棹に黄色いハンカチを下げてくれ」と伝えていた。果たして黄色いハンカチはあるだろうか、という話。公開は1977年。

列車の中でリンゴの木を見て、リボンがあれば…

 この話がルーツかと思いきや、実は『幸せの黄色いハンカチ』には原作がある。DVDのパッケージには小さく「原作:ピート・ハミル」の文字がある。

 Webサイト『世界の民謡・童謡』によると、この原作はピート・ハミルが1971年に書いたコラム『ゴーイング・ホーム』だ。ところが、1973年にアメリカのポップスグループ、トニー・オーランド&ドーンが『幸せの黄色いリボン』をヒットさせると、ピート・ハミルは自分のコラムを盗用されたと裁判を起こす。どちらも前科者が愛する者の家に向かう話で、黄色い布を目印にしている。しかし、ピート・ハミルは敗訴する。似たような話はさらに以前に存在したからだ。