2021年12月25日から、徳島県と高知県を結ぶ「阿佐海岸鉄道」で、ちょっと変わった……というより、かなりヘンな列車が走っている。「DMV(デュアルモードビークル)」という。鉄道モードと道路モードの機能がある車両だ。
水陸両用バスは東京湾や山中湖などで観光客に人気の乗り物だけど、DMVはその「鉄道/道路版」だ。道路上はマイクロバスとして自走し、鉄道駅に併設された「モードインターチェンジ」で鉄道車両に変身する。営業運行は世界でココだけだ。
鉄道からマイクロバスに
車両が所定の位置に停車すると、ボンネットに格納された鉄道用の車輪が降りてレールに乗る。この鉄道車輪によって車体が持ち上げられて、前部タイヤは宙に浮く。後部も鉄道車輪が降りてくるけれど、こちらはレールに乗るだけで後部タイヤはそのまま。なぜなら、このタイヤが「動輪」になっているからだ。前後の鉄道用車輪はレールの上を走るためにある。
鉄道区間が終了すると、またモードインターチェンジに停車して、こんどは鉄道用の前後輪を車体上部に格納する。前部タイヤが降りてきてバスに戻る。乗ってみると、道路モードはマイクロバスだ。そしてモードインターチェンジで鉄道モードになると列車になる。レールの上をなめらかに、ガッタン、ガッタンとレールの継ぎ目の音を立てる。
モード変換の様子を観察できるよう、撮影スポットを用意
DMVが導入された区間のうち、国道55号線は海岸線をなぞり、阿佐海岸鉄道は高架区間とトンネルだ。だからモードインターチェンジを過ぎると車窓もガラリと変わる。乗り心地が変わり、走路も変わり、景色も変わる。これがおもしろい。車両には陸運局のナンバープレートが付いているから、よほど狭い道のほかはどこでも走行できる。
阿波海南駅のモードインターチェンジは、このモード変換の様子を観察できるようにと、わざわざ撮影スポットを用意している。鉄道車輪の出し入れは車体の下だから、それをよく見えるようにしてくれたわけだ。無料で立ち入れるエリアだから、きっぷがなくても見学できる。道路と鉄道を自在に渡り歩くマイクロバスはかわいい。ちゃっかり鉄道線路に入っちゃうズルイ奴だ。