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連載この鉄道がすごい

世界でココだけの異端すぎる車両「DMV」が、“四国の右下”で走り出した理由

線路を走行できるバスがある

2022/01/30

genre : ライフ, 娯楽,

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 万年赤字で、とっくにバス転換されてもおかしくない。しかし、徳島県は南海トラフ地震の際の交通路として残したかった。残すからには経費を下げたい。そこでDMVというわけだ。甲浦駅には車両を通すスロープを作り、海部は高架駅だから、牟岐線の阿波海南駅までの区間をJR四国から譲ってもらってモードインターチェンジを作った。なにがなんでもDMVを走らせる。そんな執念さえ感じさせる。

甲浦駅のモードインターチェンジ

モードインターチェンジは鉄道区間の両端に限定

 DMVの定期運行区間は、阿波海南文化村から道の駅宍喰温泉まで。鉄道区間は阿波海南駅から甲浦駅まで。高知県の甲浦でバスモードになり、地上に降りたDMVは、海の駅東洋町を経由した後、北へ戻るルートで徳島県の道の駅宍喰温泉に至る。

運行開始日、道の駅宍喰温泉では花火の祝砲。海の駅東陽町でも花火大会があった

 変則的なルートだけど、これは鉄道区間の宍喰駅に車庫があり、道の駅宍喰温泉に近いから。国の指導により、モードインターチェンジは鉄道区間の両端に限定されたため、DMVはバスモードで車庫に向かう。土日祝日には1往復だけ室戸岬方面の便がある。この場合は海の駅東洋町から南下していく。室戸岬を回って終点は「海の駅とろむ」だ。

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土休日は室戸半島へ足を伸ばす。海の駅とろむに到着するDMV3号車

 沿線はもともとサーフィンやダイビングで知られている地域だ。マリンスポーツ体験もできる。水に入らなくても、竹ヶ島で海中観光船「ブルーマリン」に乗れば、ガラス張りの船底から珊瑚の海を眺められる。竹ヶ島には「島のちいさな水族館」があり、シーカヤックを使った海上散歩もできる。宍喰駅と甲浦駅からバスがでている。