「泣き笑い」の処世術。本当はつらい、苦しい、悲しいけれども、その感情を笑いで包み楽しく過ごせば、きっとこころから笑えるようになる。そう思いたい。そう思わなければやってらんない。
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言で、鉄道各社も乗客減に見舞われた。経営的にも緊急事態になってしまった。そんななか、JR東海は「泣き笑い」のような施策を打ち出してきた。「ずらし旅」「冷やし旅」……お堅いイメージのJR東海らしくないキャンペーンが好評だ。「いまなら空いてますよ。楽しみませんか」とでも言いたげだ。
観光庁の「分散型旅行」、JR東海が翻訳すると「ずらし旅」
2020年7月20日、JR東海は「ひさびさ旅は、新幹線!~旅は、ずらすと、面白い~」キャンペーンを始めた。この時、同年4月に発出された3度目の「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」は解除されていない。しかし、6月20日に沖縄県以外は対象から外れ、7月12日に東京都が再発令を受けるなど、対象地域が流動的になっていた。その後関東各県や大阪も再発令となるけれども、7月20日時点ではJR東海に限らず、交通機関や旅行関連業では「もう待てない」「もう持たない」という状況にあった。ところが国が旅行代金の1/2を補填する「GoToトラベル」事業は停止されたままだ。
そこで観光庁は旅行関連事業者と共同で「分散型旅行」キャンペーンを始めた。「時間や場所が分散された新しい旅のスタイルを促進するキャンペーン」だ。個人旅行や少数グループで、混雑する時間帯を避け、密にならない観光地を奨励する。これを受けてはじまったキャンペーンが「ひさびさ旅」「ずらし旅」だ。
「ずらし旅」はJTB、日本旅行、近畿日本ツーリスト、東武トップツアーズ、名鉄観光と提携した。新幹線チケットとホテルを組み合わせた「ダイナミックパッケージ」に「ずらし旅選べる体験クーポン」が付く。たとえば関西だと「道頓堀ミニクルーズ」「京都タワー開場30分前先行入場」のように、密を避けた特別な楽しみを提供する。
旅客数の上昇傾向は見えてきた
広告宣伝はSNSを活用する。マスメディアを使った広告は影響力が大きすぎて「ずらし旅」の主旨に合わない。そこでキャンペーン用Webサイトに、SNSで知名度を上げたインフルエンサーや、地域を知り尽くす旅の達人100人のコラムを掲載した。個々の趣味に合わせた小さな旅の需要を掘り起こし「ずらし旅」キャンペーンは成功した。