今年のダイヤ改正は減便や終電繰り上げが目立って寂しい。そんな中で、少しでも前向きなネタが「新幹線の高速化」だ。

 JR東海は、東海道新幹線の東京~新大阪間の「のぞみ」について、定期列車4本の所要時間を3分短縮する。JR東日本は東北新幹線の上野~大宮間の最高速度を時速110kmから時速130kmに引き上げる。その結果、上野~大宮間を走る東北・上越・北陸新幹線の全列車が所要時間を1分短縮する。東北新幹線に直通する山形・秋田新幹線も恩恵を受ける。

東海道新幹線 ©iStock.com

東海道新幹線は「列車の順序変更」で所要時間短縮

 現在、東海道新幹線「のぞみ」は所要時間2時間27分の定期列車が64本、同2時間30分の定期列車が94本走っている。3分の差の理由は、「ひかり」「こだま」との運行間隔や追い越す駅の違いだ。

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 ダイヤ改正によって列車の相関関係を見直して、定期列車4本を最速タイプにする。さらに、最速タイプで設定された臨時「のぞみ」と、最速ではない方の定期「のぞみ」を入れ替える。こうして、ダイヤ改正後は最速タイプが79本となる。「のぞみ」定期列車は158本あるから、これで半数が最速タイプになる。

「のぞみ」高速化はダイヤの工夫で実現(JR東海プレス資料より

 たかが3分、されど3分。時刻表をじっくり見比べないと解らないし、3分差よりも、都合のいい時刻で走る列車を選ぶから関係ないという人が多いかもしれない。しかし、こうした小さな速達化への努力が新幹線の性能を上げてきた。

 ちなみに、現在の「のぞみ」の最速列車は「のぞみ265号」「のぞみ64号」だ。それぞれ東京と新大阪を21時24分に発車し、23時45分に新大阪・東京に到着する。所要時間は2時間21分だ。前後に列車が少ないため、存分に最高速度を発揮できる。東海道新幹線の開業時は、東京~新大阪間は最速で4時間だった。その後すぐに3時間10分となった。そして現在は2時間21分だ。49分も短縮されている。

東北新幹線は騒音レベルの解決で高速化

 東北新幹線の上野~大宮間は、主に高架区間で時速110kmの速度制限がかかっていた。その理由は騒音対策だ。

東北新幹線 ©iStock.com

 1975年7月、環境庁(当時)から「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」との告示があった。「主として住居地域は70db以下」「商工業用地域など、住宅地域以外の地域で通常の生活を保全する必要がある地域は75db以下」である。翌年の3月、閣議で「新幹線鉄道騒音対策要綱」が了解され、後に「75ホン対策」が設定された。この数値は暫定的とされ、将来はもっと下げるべきとして「目標」となっている。この数字が現在も有効だ。