毎年2月ごろになると、鉄道ファンにとっては「もうすぐダイヤ改正ですね」が時候の挨拶となる。JRグループをはじめ主要鉄道各社では、3月にダイヤ改正が行われる。それに先駆けて、鉄道ファンたちは各社の発表に一喜一憂する。新しく誕生する特急や駅もあれば、役目を終えて引退する列車や駅があるからだ。
今回は、ダイヤ改正で引退する東日本エリアの名列車たちを、女性鉄道ファンとして独断と偏見でピックアップする。
旅好きを温泉地に運んだ「昭和レトロな特急185系」
今回のダイヤ改正で、心を痛めたファンが多い引退車両の筆頭が、旧国鉄の特急車両185系だ。1981年にデビューし、特急「踊り子」(東京~伊豆急下田・修善寺間)などを中心に運転され、関東の人々に愛されてきた名車両。40年というロングランを経て、ついに定期運行から卒業する。
普通鋼製のゴツゴツした白色の車両に、すがすがしい緑色の斜めストライプ。特急踊り子の顔部分には、小説『伊豆の踊子』をイメージした、女性の横顔のヘッドマークを冠している。車両に乗り込めば、長年旅人と運んできた香ばしい香りが漂い、旅情に誘われる。目的地は、湯けむり立ち込める伊豆の温泉地。行き先を見るだけで、誰しも心が踊る。
そんな人気車両の引退に、ネットでは「とても寂しいけれど、感謝しかありません」「これも時代の流れだと思う」など、惜しむ声が続々と集まっている。JR東日本は、車両の活躍を振り返る企画「メモリアル185」の公式アカウントをTwitterで開設。車両引退に伴うTwitterアカウントの開設は異例だろう。
185系が去りし特急踊り子は、E257系へと引き継がれる。伊豆の空と海をイメージした「ペニンシュラブルー」で彩られた車両だ。また同区間では、オシャレ度の高い観光特急列車「サフィール踊り子」も2020年にデビュー。地味な185系は、非テツな乗客からは「ボロい特急」として敬遠されることもあり、悲しいかな徐々に存在感を薄れさせていた。
185系は、定期運用は終了するものの、臨時列車としての運用は続く。特急踊り子の増発便や、臨時快速「あしかが大藤まつり」(大船・上野~桐生間)など、春の臨時列車での運行スケジュールがすでに組まれている。2月13日夜の地震の影響で不通となった東北新幹線の救済便としても活躍し、鉄道ファンが殺到する事態となっていた。